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Fushimi side.
由井さんの朝食用のヨーグルトを買い忘れたことに気がついたのは、風呂に入ったあとだった。
本当なら違うものを作ってもいいんだけど…由井さんは朝は色が細いからヨーグルトにいろいろ混ぜて食べるのがいちばん美味しいらしい。
最初それを食べた時の笑顔は今でも忘れられないし、それが見たくて俺も毎朝それを必ず用意するようになった。
「(深夜のコンビニって…、なんだか紬さんと十座みたいだな…。)」
のんきなことを考えながら、俺はコンビニにはいる。
すると、雑誌コーナーに見覚えのある姿を見つけた。
「由井さん?」
俺がそう声をかけると、わかりやすく跳ねる肩。
そっと俺を捉えた大きな瞳は恐怖の色を宿し、マスク越しでもわかるほど顔色は悪かった。
…様子がおかしい。
まるで、"見つかってしまった"とでも思っているようにも感じた。
『ふっ、伏見さん…?どうして…』
「明日の朝用の食材を買い忘れちゃってな?
…由井さんは?大丈夫?」
『私は…全然…』
そう言っている割には声が震えている。
…いくら人気声優さんで大人っぽいからって、こういうところは年相応に見えた。
何も喋らず俯く由井さんを見ていると、ちらちらと窓の外を見ていることに気がつく。
確認したい何かがある…?そう思って窓の外を見ると、電柱に身を隠している男がいた。
…身を隠してるつもりだろうけど、生憎こちらは喧嘩でそういうのには人一倍鋭くなっている。
…なるほど、ストーカーか。
最近由井さんの様子に違和感を感じてたけど、これが原因みたいだな?
「…帰ろ、由井さん。」
『あっ…』
「大丈夫、他の奴らには言わない。」
柔らかい腕を掴むと、バッと顔をあげた。
その表情は…安心と恐怖を孕んでいた。
多分…迷惑をかけてしまうとか、危険にさらしてしまうとか考えてるんだろうな。
そんな由井さんの姿を見て、不覚にも愛おしいと思ってしまった自分に軽くイラついてくる。
俺に頼ってくれたらいいのに、どうやら彼女は俺に守らせてはくれないらしい。
…それなら、俺が無理矢理にでも守るしかないよな。
「怖かっただろ…?もう大丈夫だから。
俺は男だし、この体格からわかると思うけど…弱くはない。
大丈夫、怪我なんてしない。もちろん迷惑でもない。
だから、一緒に帰ろう。」
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夢花(仮垢) - 夢主ちゃん頑張れ…。あ、どこかは忘れましたが(すみません)、この続編のどこかに「してしまった」の所が「してひまった」になってました。今自分が覚えてるってことは割と最後の方です()中途半端 (2018年11月16日 9時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 悠斗さん» コメント、並びにご指摘ありがとうございます。早急に訂正させていただきます。大変失礼いたしました。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 92b7e8a327 (このIDを非表示/違反報告)
悠斗(プロフ) - いつも楽しく読んでいます。文字ミスなのですが120ページの「仕事が立て込んでて、MANKAI両へ帰る余裕がなかったのだ。」 のところで『両』ではなく『寮』ですよね。 (2018年4月7日 11時) (レス) id: c0cfb0f959 (このIDを非表示/違反報告)
ますみすみ(プロフ) - いやぁぁぁッ///みすみーッ///本当この作品大好きです!!! (2018年4月3日 0時) (レス) id: 43e6e1321d (このIDを非表示/違反報告)
フユキ(プロフ) - ひぃゃゃゃゃああ!!!三角〜!!!かわいいよ〜〜〜!!! (2018年4月2日 21時) (レス) id: 700d4b33cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青 | 作成日時:2017年11月6日 22時