4 ページ4
立ち上がって校庭の方に戻ろうとすると、手首を掴まれる。くん、と引き戻される感覚。
振り返ってコネシマを見ると、下を向いたまま小さく「…行かんといて」と呟いた。手首を掴む大きな手のひらは、確かな力が篭っていた。
なんだか捨てられた子犬が引き留めているみたいで振りほどけない。こいつほんまギャップえぐいな。
確かに1人にするのは忍びないし、振りほどくことも出来ないのでとりあえず手首を掴まれたまま隣に座る。柱に項垂れたコネシマは隣に座った私を一瞥する。
『どした？気持ち悪い？』
「…まだ行かんといて」
『どこにも行かへんって。大丈夫やで』
「…そか」
私も柱に寄っかかってどこにも行かないことを理解すると、満足したように頷いた。まだ手は離されていないが、少しだけ力が緩んだ。
このまま回復するまで居ってもええねんけど自分の練習もあるしなぁ、とスマホを取り出して大先生に「コネシマが体調悪いっぽくて動けへんくて様子見とるから、なんかあったら先生に伝えといて」と軽く連絡を入れる。直ぐに既読がついて「了解、コネシマ大丈夫なん？」と返事が返ってくる。
慣れた操作で文字を打ち込んでいると、肩に重みがかかる。ちらりと隣を見ると、コネシマが目を閉じて私の肩に頭を預けていた。うわぁ、しんどそう。
傍からみたらカップルが隠れてイチャついてる風に見えるんやろうなぁ、と思いながら人通りの少ない場所であることに感謝した。
私も喉乾いてきたなぁ、と飲み物を飲むために1回手離してとコネシマに言うと、「…嫌や」とまた力を込められた。私も飲みたいから、と更に告げると名残惜しそうに手が離された。
だいぶ温くなったスポーツドリンクを1口飲む。キャップを締めると肩に乗せられた頭が少し身じろいで、コネシマの手が私の手を探す。今度は手首ではなくしっかりと手のひらを掴み、満足したようにまた目を閉じた。お前あれか、風邪引いた時甘えるタイプか。
『大先生がエミさん呼んでくれたみたいやから、もうちょいしたら来るで』
「…早ぇよ」
『何が？』
「いや、なんも」
あまり話しかけるのも可哀想なのでそれ以上声はかけずただ肩の重みを感じながら、遠くから聞こえる喧騒に耳を済ました。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 862人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
悠亜(プロフ) - guririさん» コメントありがとうございます！きゅんきゅんして頂き幸いです…続編もよろしければお楽しみください！読了ありがとうございます！ (2019年11月20日 23時) (
レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
guriri - ヤバいめっちゃキュンキュンする．．．！ (2019年11月19日 20時) (レス) id: 5d86136675 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - 友希那さん» 友希那さんコメントありがとうございます！毎日更新出来なくて申し訳ありません…。楽しみにして頂けてとても嬉しいです。今後もキュンキュン出来るような展開に持っていきたいのでぜひよろしくお願いします！ありがとうございます！ (2019年8月6日 19時) (レス) id: 66cdfbcc74 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - ひーちゃんさん» ひーちゃんさんコメントありがとうございます！狂犬組良いですよね、とても夏が似合う…。そろそろその2人も出そうと思ってたのでリクエスト嬉しいです。ありがとうございます！ (2019年8月6日 19時) (レス) id: 66cdfbcc74 (このIDを非表示/違反報告)
友希那 - ｷｬｰｰｰｰ!!毎日コツコツ更新チェックしながら見てるものです。いつもキュンキュンさせてもらってますよぉ！これからも応援してます! (2019年8月4日 18時) (レス) id: 43ce5d2e93 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：悠亜 | 作成日時：2019年5月8日 21時
