拝啓 ページ41
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拝啓
穏やかな小春日和が続いており、過ごしやすい気温となりました。私がこの風柱の邸宅にお世話になって早くも半年になりました。その節は本当にお世話になりました。
私は喋る事が苦手です。それは、今も変わらず。この口下手のせいで周りの方々には多大なるご迷惑をおかけしました。申し訳ございません。
実弥が眠ってからもう十日も日が過ぎてしまいました。毎日規則正しい呼吸音で眠っている姿を見ると心配と不安で押し潰されそうな気持ちになります。
口下手な私を心配してしのぶさんが「手紙を書いて渡したらどうか」と言われました。手紙なら次何を話せば良いか予め書いてあるので無口な私でも実弥と話す事が出来ると思い、筆を握りました。
さて。何を書こう、何を話そうと思って何度も書いては捨て書いては捨ての繰り返した挙句、自分の話をしようと思いました。長くなりますが、どうか最後まで読んで頂けると幸いです。
私は十歳の頃、実の親とさよならをしました。当時の事はよく覚えています。「必ず貴方を迎えに来るから」と言って手を離され、そのまま知らない人の家に渡されました。家族を護れるなら、自分自身はどうなっても良いと思い、私は人質の道を選びました。
君は何時でも殺れる、切り落とせる。
君は何時でも死ねるんだよ。
それが主人の口癖でした。鉄製の首輪をかけられ布団と本しかない辺境の一角の狭い部屋に閉じ込められました。
十三の時、初めて友達が出来ました。実弥は怒るかもしれません、相手は鬼なので。毎日毎日飽きもせず私の部屋を訪れ、話しかけてくれました。しかし十五の時、私の家族は死んでしまいました。私が殺してしまったから。あの時私を助けてくれたのは友達でした。すぐ立ち直る事は出来ませんでしたが、前を向けたのはあの友達のおかげです。
実弥は覚えているか分からないのですが、私は一度十六の時に実弥に会いました。何処で?と言われるとうろ覚えで、もしかしたらあれは夢だったのかもしれないのですが、とある花畑で私は実弥と会ったのです。
実弥は何故か私の事を知っていて、私の為に泣いてくれました。嘘じゃないですよ、本当なんです。
私の腕の傷も、受けた痛みも、抱え込んだ苦しみも全部受け止めたいと、実弥は言ってくれたんです。
私、嬉しかった。嬉し過ぎて夢だと思った。
名も知らない、誰かも分からない相手なのに、何故か安心した。護って欲しいと思った。
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 大ファンです!完結おめでとうございます!伏線回収も回想シーンも最高でした!自分はアザミちゃんが好きです。 (2021年10月3日 23時) (レス) @page48 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
ライアミ - めっちゃ泣けたヨ!布団がめちゃくちゃ濡れてんだけど……………ヤバいネ。感動をありがとアル!泣くことや笑うことはストレス発散になるからネ!終わりヨ! (2021年3月28日 1時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。光華さん、いつも自分の作品にコメントしてくださって、本当にありがとうございます!鬼滅作品を思う存分書いた後、すぐに銀魂復帰しますので、約束です! (2021年1月25日 0時) (レス) id: 611a77bbbd (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 完結おめでとうございます!次も鬼滅ですか!銀魂も鬼滅も好きなので!! 銀魂作品更新応援してます!何時までも待ってますんで、虚無感ゆっくり消化してください (2021年1月24日 18時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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