過去 ページ15
.
「あ…お母さん、でしょ?大丈夫?どこか…痛いとこ、とか…」
唸り声をあげて
「…おい、アザミ!!!」
俺は振り向いて遠くにいるアザミを叫んだ。俺の声は彼女には届かない。俺は此処に存在していない人物なのだ。
「…何よ、うるさいわね」
叫んだと同時に既に隣に居たアザミ。俺はビクッと驚いたがすぐに冷静になりアザミへ話しかける。
「あの女、お前の母親か?」
「…知らないわ」
「嘘つけ!アレは鬼だ、アイツの母親は鬼になってるんだァ!止めろ、お前なら何とかできるだろ!?あのままじゃアイツは…ッ!Aはッ!!」
俺はそう言いながらアザミの肩を揺らした。されるがままに揺らされるアザミは真顔で、静かで、妙に呆然としていて。
「…何とか、できるなら」
「あァ!?」
「何とかできるならもう何とかしてるわよッッ!!!」
「!!」
アザミは目を見開きながら、荒々しく叫んだ。俺はアザミの肩をギュッと掴み、ただ見てる事しか出来ない現実を突きつけられた。
「あ"ああ"ぁッッ!!!!」
そんな叫び声が聞こえたのは、俺とアザミの口論の最中であった。
俺達二人はすぐ口論をやめ、声のする方へ振り向いた。
「…ッ、オイ!」
女の人は倒れていた。彼女はそれを支えるように身体を抱いていた。彼女の目からは大量の涙がこぼれ落ちて、何が起こっているのか分からない様子だった。彼女の頬は涙の他に血がついており、彼女の腕には今切ったであろう傷跡。そして母親と呼ばれる女の人の口元には大量の血液。
「…今見てるのは、"過去"なのよ」
隣にいるアザミが、震えながら言った。
「…変えれるものなら…、変えてみなさいよ」
あァ、何で俺達は見てる事しか出来ないんだ。
「救えると思った。だって…鬼になってるなんて、思わないでしょ?母親が此処で苦しそうにうずくまってたのよ。…助けるでしょ?"娘"として…"人質"として、助けるでしょ?血を飲ませば…人は救えるのよ。…飲ませるでしょ?普通、飲ませるわよ。でも、飲ませた結果が"
「……笑えねェ」
笑えねェよ。何も、笑えねェ。それにお前だって、笑ってねェじゃねェか。ちゃんと、泣いてんじゃねェか。
「…ッ、泣いて…ないわよッ!馬鹿野郎…ッ!」
声に出てたのかよ。クソ、クソだ。
「何もかも、クソッタレだ」
.
195人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うぇすとり?ぁー(プロフ) - 大ファンです!完結おめでとうございます!伏線回収も回想シーンも最高でした!自分はアザミちゃんが好きです。 (2021年10月3日 23時) (レス) @page48 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
ライアミ - めっちゃ泣けたヨ!布団がめちゃくちゃ濡れてんだけど……………ヤバいネ。感動をありがとアル!泣くことや笑うことはストレス発散になるからネ!終わりヨ! (2021年3月28日 1時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。光華さん、いつも自分の作品にコメントしてくださって、本当にありがとうございます!鬼滅作品を思う存分書いた後、すぐに銀魂復帰しますので、約束です! (2021年1月25日 0時) (レス) id: 611a77bbbd (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 完結おめでとうございます!次も鬼滅ですか!銀魂も鬼滅も好きなので!! 銀魂作品更新応援してます!何時までも待ってますんで、虚無感ゆっくり消化してください (2021年1月24日 18時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ