彼女 ページ40
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彼女が鬼殺隊に入る事はなかったし、俺が任務の時は一人でちゃんと留守番をしてくれる。
最近ようやく俺が居なくても寝れるようになった。餓鬼かよ、と思いながらも俺が夜居る時は二人で一緒に寝る。二つ布団を敷いているのにも関わらず朝になると俺の布団に彼女は侵入して俺に抱きつく様に眠っているのが殆どだった。
こんな日常が続くのは本当に良いのだろうか。俺はただ彼女が失った空白の十年間の代わりになりたいだけだった。愛を忘れてしまった彼女に沢山の愛を届けたいだけだった。しかし、これで本当に良かったのだろうか。
彼女は緑色が好きみたいだ。俺の日輪刀の色が緑色だからか、俺のお古の着物が深緑色だからか、彼女が自分で選んだ女物の着物も緑色だし、緑色のものを見つけると「…実弥の刀」と必ず言っていた。
彼女はおしるこが好物だ。俺と休日甘味屋へ行くと必ずおしるこを頼んでいた。自分の好物にも関わらず誰かと共有したいのか絶対に俺に一口あげようとしていた。ちなみに絶対俺のおはぎも一口食っていた。
彼女は臨書をよくしている。一人で屋敷に居る時や、俺が庭で稽古をしている時、彼女はよく居間で臨書をしていた。俺の知らない漢文を手本にしていたり、習字をしていたり、とにかく字をよく書いていた。
彼女は身体をよく動かす。体幹が良いのか、柔軟性が高いのか、側転や逆立ち、バク転などよく飛び回っていた。初めこそ天井にぶら下がっていた時は驚いたが、今や日常茶飯事だ。
毎日一緒にいると、沢山彼女の事を知っていく。彼女が笑った事、彼女が怒った事、彼女が悲しんだ事、彼女が楽しんだ事。それをこれから先も俺は知っていけるのだろうか。これから先俺は彼女の隣に居れるのだろうか。
─────居ても、いいのだろうか。
あの日を境に俺は彼女の異能力について知る事はなかった。いや、知りたくなかったから関わらないようにしていた。
彼女が俺と出会った日に何を思っていたのか、人質だったあの頃何を感じていたのか、そんな事を知る事はなかった。しかし、知らなくてはいけなかった。
彼女が笑う度、彼女の首元で光る銀色の首輪が俺の視界をチラつかせる。彼女はまだ、首輪を外さなかった。何故?どうして?そんなの、聞けない。聞いたら何かが壊れるからだ。
毎日俺の白い襟巻きを首に巻いて外へ出る。毎日俺の白い襟巻きを首に巻いて他人に会う。そして、風柱邸に戻った時に、襟巻きを外すのだ。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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