元気 ページ39
.
「…すごい?」
彼女がフッと俺を見つめながら笑った。俺は「いや、すごい…けども、」といきなりの彼女のいきなり過ぎるお披露目会に理解が追いついていなかった。
すると彼女が眉を下げながらこちらに近づき、さっき俺が彼女の頬を引っ張ったように、彼女もまた俺の両頬に手を当てて「…実弥、元気ない」と言った。
「…え、」
彼女は困ったようにそう言った。元気ない、ように見えたのか。そうか。
「あと、怪我してる。痛い、治す」
「…おう」
そう言って彼女は俺の頬から手を離そうとした。待ってくれ、離さないでくれ。無意識に俺は彼女の手を掴んでいた。俺の頬から離れて欲しくないが為に手を掴んで、そのまま彼女を抱きしめた。
「…?」
彼女はどうしたの?というような表情で俺を見ていたが、彼女の顔はそのまま俺の胸元に埋まっていた。
「…離れんな、俺が…護るから、」
俺は小さくそう呟いた。紛れもない本心だ。でも正直怖かった。真実を知りたくなかったからだ。
「実弥」
「…何だァ」
「おか、えり」
彼女が俺に抱きしめられながらそう言った。俺は彼女の背中に手を回して「あァ、…ただいま」と呟いたのだった。
.
彼女が俺の屋敷に来て何ヶ月経ったのだろう。俺の前でしか喋る事が出来なかった彼女も、少しずつ他の柱と会うようになった。
最初の頃は相槌をするのに精一杯だった彼女もいつの間にか笑うようになり、そのまま少しだけ会話をするようになった。
他の柱達がその調子なら、俺はもっと先に進む。彼女は俺と二人きりの時はよく喋るようになった。
彼女は特に胡蝶しのぶと甘露寺蜜璃と会うようになった。女同士、仲良くなるのも早い。
冨岡とはあの謎の昼食以来、よく会うらしい。お互い無口無表情人見知りな為大きな変化はないが二人で道中を歩く姿をよく見かけると胡蝶が言っていた。俺は認めない。
宇髄は彼女を見掛けると必ず話しかけていた。「今日も派手に無口だなぁ!」と言って彼女をよく困らせていたので見かけ次第、蹴り飛ばした。
伊黒は口調こそ当たりがキツいものの甘露寺と三人で飯を食いに行く事もあるらしい。あんな奴だが意外と彼女を気にかけてくれているようだ。
煉獄や悲鳴嶼さん、時透とはまだそこまで関わりがないらしい。煉獄や悲鳴嶼さんは多分可愛がってくれるだろう。時透はよく分からないが。
.
256人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ