一口 ページ34
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「お待たせしました、おはぎとおしるこです」
彼女がキョロキョロと甘味屋を見渡してる間に俺達が頼んだものがやって来た。
「熱いから、気ィ付けろよ」
そう俺が言うと彼女は頷き、お椀に入ったおしるこを食べ始めた。俺も頼んだおはぎを頬張る。やっぱり美味い。彼女も幸せそうに食べていた。おしるこも良いよな、餡子と餅ってなんでこんなに合うんだろうか。そう思いながら餅を頬張ってる彼女を見つめた。
視線に気付いたのか、彼女は自分の持っているおしるこのお椀を俺の方に差し出し「…食べる?」と言った。俺は思わず目を見開いた。
「あ、いや、そういうつもりじゃ…」
俺は咄嗟にそう言ってしまった。どうやら俺が物欲しそうに彼女を見ていると勘違いさせてしまったようだ。恥ずかし過ぎるだろ。そう言うと彼女は"要らないの?"というような表情で俺を見た。やめろ、そんな目で俺を見るな。
「……じゃあ、俺のおはぎも一口食うか?」
視線に耐えれなくなった俺は半分食べたおはぎを彼女に差し出した。彼女はコクリと頷いて口を開いていた。…口を開いていた?
「…は、」
───食べさせろと。俺が食べさせろと。
仕方なく俺は黒文字でおはぎを食べやすい大きさに切り、彼女に食べさせた。
「…」
無言でもぎゅもぎゅと食べる彼女。今の俺は多分顔が赤いと思う。一個しか変わらない歳下になんでこんなお守りみたいな事をしなくてはならないのか。まァ別に嫌な気はしないが。
「ん、あんがとよ」
彼女から貰ったおしるこを俺も食べた。やっぱり美味い。粒あんが甘くて美味い。そう思いながら彼女を見ると、彼女も、嬉しそうに顔を綻ばせていた。
────いつもそうしたらいいのに、なんて。
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「屋敷から出たらダメだからな」
「帰りが多分遅くなるから先寝てろよ」
「一人で大丈夫か、蝶屋敷に居てもいいんだぞ?」
彼女はひとつひとつの俺の言葉に頷いていたが、最後の言葉には首を横に振っていた。
「じゃあ、行ってくる」
隊服に身を包んだ俺がそう言うと彼女はバイバイと手を振っていた。そんな姿が可愛らしいと思って彼女の頭を撫でた。俺は今から任務である。
鬼殺隊では無い彼女を連れていく訳にもいかず彼女は一人で風柱邸でお留守番。正直彼女を一人にさせるのは不安だが蝶屋敷に行かないと彼女が言うので仕方がない。
俺は早く帰ろうと思いながら鎹鴉と共に任務地へ向かったのだった。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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