薊柄 ページ31
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────あ、コレ
数多くの着物の中から俺がふと目に止まったのは白色ベースの着物。着物の色に対して目に止まったのではなく、肝心なのはその柄だった。その白い着物の柄は、彼女の瞳と同じ赤みがかった紫色の薊の花柄だった。
コレ、いいなァ。と、俺はそう思いながらその着物を見ていた。すると奥から店主の声が聞こえて振り向くと、緑色ベースに白い花が沢山ついてある着物を着た彼女がそこに立っていた。しっかり俺の襟巻きも身につけていた。店主にはバレなかったようだ。
「コレなんてどうでしょう?お嬢さんが自分で選んだんですよ。緑色を」
そう店主が言った。彼女はトコトコと俺の元に駆け寄ってきて自分の着物を見せる様に両手を広げていた。
「…似合うな。それひとつ」
「はいよ」
即決で店主に言うと彼女があまりの俺の決断力の速さに驚いた表情をしていた。
「なんだよ、似合ってんだから良いだろ」
「…」
ポケーと俺を見る彼女を置いて、俺は会計の方にいる店主にまた話しかけた。
「あと、アレもくれ」
俺が指差したのは先程見ていた薊の花の着物。彼女がまだ買うのかと言った表情で俺をまた見ていた。意外と彼女の表情筋は活発に働いている様だ。
「わかりました」
店主はそう言うと飾っていた薊の着物を取り出し、彼女の方へ当てていた。そして俺の方を見ながら「どうでしょう?」といってきた。
「俺の目に狂いはなかった…って奴だなァ」
俺がそう笑うと店主もフフフと笑いながら「そうですねぇ」と言っていた。彼女は目を見開きながら俺と店主を交互に見合わせ困っていた。今日の収穫が二つも出来て俺は嬉しかった。
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「腹減ったろ」
着物屋を出て俺は彼女にそう言った。俺の着物から新しい緑色の着物に身を包んだ彼女は首を縦に振っていた。そろそろ昼時の頃だ。
白い着物と朝着ていた俺のお古の着物を持った俺は「定食屋でもいいか?」と彼女に聞き彼女は頷いた。
人通りも昼になると多くなってきた。ボーッとしている彼女が心配な俺は荷物を持っていない方の手で彼女の手を取り、よく行く定食屋へ向かったのだった。
「…」
「…」
「げ」
定食屋について早々、出会してしまった相手。その名も冨岡義勇。彼女も冨岡も無言で目を合わせていた。ちなみに「げ」と言ったのは勿論、俺。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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