寝癖 ページ28
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「…」
背中を優しくさすっていると、バチッと目が開いた。彼女は眠そうに目を擦る…事など全くせずバッと起き上がり俺の手は早々に離された。なんだなんだ忙しいな、と思いながら俺は起きた彼女を見ていたが、彼女は周りをキョロキョロして一安心したのか、また俺の胸元へ抱きついた。そして、また寝た。
「…………は?」
何が何だか分からなかった。あとそろそろ足が痺れて感覚がなくなるから離して欲しい。
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今日は夜から任務があるからあのまま二度寝、という訳にはいかず静かに彼女を起こして朝食をとった。彼女はボーッとした表情で台所に立っていて、俺の作っている味噌汁が入った鍋を見ていた。
「寝癖、直してこい」
俺がそう言うと彼女はコクリと頷き洗面所へと向かって行った。二十歳の女が寝癖だらけで男の前に立つんじゃねェ、と思いながら溜息をついた。
味噌汁を作り米をゆすって適当に焼いた魚を皿にのせた。二人分の朝食が出来たと思った矢先に洗面所の方からバシャーーン!という大きな水しぶきの音が鳴り響いた。
「…はァ?」
「…」
急いで洗面所に行くと全身ビッチョビチョになった彼女が真顔で立っていた。
「…何してんだァ」
「…」
俺が怒りに満ちた顔で彼女を睨むと彼女は無表情でフイッと顔を横に向けた。
「風邪引くだろォ!手ぬぐいがそこにあるから拭け!!」
俺はそう言って棚に閉まっている手ぬぐいを指さしたが彼女は何処にあるのか分かっておらず目が泳いでいた。
「あァもう!」
それにイラついた俺はバッと手ぬぐいを取り出しワシャワシャと彼女の髪と顔と身体を拭いた。なんでこんなにびちょ濡れになるんだよ。
されるがままに彼女は拭かれるのを待っていた。今日は一言も喋んねェな、そう思いながら手を動かし新しい服を探した。
「俺の服しかねェなァ、当たり前だけど」
俺の着物だとひと回りデカい。しかし彼女は最初から男用の黒い袴を着用していたので男用の着物には慣れているだろう、と思い俺が昔着ていた比較的小さめの深緑色の着物を取り出した。
「これ着れるかァ?」
「…」
コクリと頷いた彼女は俺が渡した深緑色の着物を手に取り自分の服を脱ぎ出した。
「ばっ…!俺が出てってからにしろやァ!!!」
俺がいるにも関わらず服を脱ごうとする彼女に赤面を隠しながら洗面所を出た。朝食が冷めないうちに彼女を呼びたいが、朝からこんな騒がしい彼女からしたら不可能な話であろう。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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