筆談 ページ13
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「君の名前を…教えてくれるかい」
彼は優しい口調で彼女に聞いた。彼女は黙ったままだった。
「…喋る事が、難しい?」
そう聞くと彼女は縦に頷いた。困ったように彼は笑い、「無理強いはよくないね」と言った。すると彼の隣に座っていた産屋敷あまねが口を開く。
「筆談はどうでしょう」
そう言うと彼は「それは良い考えだ。A、筆談なら私と話してくれるかい?」と聞いた。彼女は沈黙の末、また小さく頷いた。あまねは筆談用の紙と万年筆を持ってきて彼女に渡した。軽く会釈をした彼女はまた彼の方を見る。
「まず、名前を教えて欲しい」
彼女は紙にゆっくりと文字を書きはじめた。
『薊美Aです』
そう書いて彼に見せた。彼はそれを見るなり笑顔で「良い名前だね」と言った。
「では、Aは何故あの屋敷に居たんだい?」
彼はそう聞くと彼女は俯いた。答えるのを躊躇っているかの様な様子だった。しかし彼の眼を見ると静かに万年筆を持ち直した。
『私は』
「うん、」
彼はしっかりと相槌をうった。彼女は書いた文字をしっかりと持ち、ゆっくりと彼に見せた。その言葉に、彼は言葉を失った。
『私は、人質です』
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彼女、薊美Aの帰りを待っていた胡蝶しのぶは産屋敷邸の門の前で一人佇んでいた。すると「胡蝶しのぶ様」と不意に呼ばれ振り向くとお館様の娘であるにちか様とひなき様がそこに立っていた。
驚きのあまり言葉を失っていたがすぐに「お館様がお呼びです。緊急柱合会議です」と言われた。緊急柱合会議。きっと彼女の件だろう。そう思いながら胡蝶は返事をして二人の跡を歩いた。
「しのぶ、待てせてごめんね。今から緊急の柱合会議を始めようと思うんだ」
「御意にございます。…あの、Aさんは…どちらに?」
「あぁ、Aは後ろの襖の奥で隠れているよ」
「え、Aさん?」
そう言って胡蝶は失礼ながらもお館様の座っている後ろの方へ目を凝らした。襖が半開きになり、そこから小さく座り込んでいる彼女の姿が見えた。何故そこに隠れているのか、と思いながらもう一度「Aさん」と名前を呼んだ。胡蝶の声だと気づいたのか彼女はチラッと襖から顔を出す。
「何してるんですか、こっちへ来て下さい」
胡蝶はそう言って彼女を呼んだが、彼女は動こうとしなかった。体育座りで黙って隠れていた。
「どうやら他の柱が来るから、怖いみたいだね」
「なるほど…」
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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