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彼は勇敢な少年だった。初めて彼を見た時、ランドセルをそれはもう豪快に土だらけの地面に放り投げて走っていくその姿が私の目に映し出された。思わず私は耳にさしていたイヤホンを手に取って立ち止まる。
今どきの小学生はランドセルを投げ捨てるのか、なんて呑気な事を考えていたその時だ。爆走していた少年がまさかの滑り台から落下したのだ。
「へ？」
思わず変な声が漏れた。持っていた学生鞄が手からズレ落ちる。そんな事を気にする暇もなく私は公園の中に入って行き転げ落ちた少年の元に駆け寄った。
「僕、大丈夫！？」
慌てふためく様子だったと今更ながら思った。私は少年に恐る恐る話しかけてみるも少年は蹲ったままビクともしない。黒く長い前髪が少年の目を隠す様に靡かせていた。とても綺麗な黒髪だった。いや、そんな悠長に観察している場合ではないだろうが。
私は少年の肩を少しだけ揺らす。気を失ってるんではないかと不安を募らせながら少年の顔を確認した。
────その時だ。
バッと音を立てて少年は立ち上がった。その反動で私はその場に尻もちを着いた。びっくりした、なんて言葉も付け足して。少年は服に付いた土埃を手で豪快に払い除けていた。あれだけ盛大に転んだのだ。少年の身体は擦り傷だらけで膝なんて血が滲んでいた。見るからに痛そうだ。私は落っことした学生鞄を拾って中に入っていたハンカチと数枚の絆創膏を取り出す。近くの水道でハンカチを濡らし私は再び少年の元へ駆け寄った。
「染みるかもしれないけど許してね」
少年をベンチに座らせて私はそう告げた。まずは血が溢れ出て見るからに痛々しい膝の怪我から処置をする。こういう時治癒系の個性を持っていたら、なんてないものねだりをしてみるが持ってないものは仕方ない。自力で何とかするしかない。
冷たいハンカチがそっと少年の膝に触れた。その時、少年はビクッと肩を揺らしていたが気にせず私はハンカチを押し当てた。止血が完了すると直ぐに絆創膏を剥がす。これは一枚では足りないなと思い、二枚、三枚と無言で剥がした。
「…ありがと」
ここで初めて少年が私にお礼を言った。あんなに豪快に走り回りランドセルを投げ捨てたあの姿とは打って変わって意外にもこの少年は穏やかな様子で私に礼を言ったのだ。その時の私の顔はきっとマヌケな表情だったと我ながら思う。
ひと通りの処置を終えて少年の頭を優しく撫でた。私にも弟が居たらこんな感じなのだろうか。
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前頭葉爆発(プロフ) - いくまさんの作品は何度みても色褪せなくて、毎回感動しちゃいます🥺 新作も続編も見たいです（欲望）誇張表現とか無しで本当に尊敬してる1番超大大大大大好きな作者様です！！身勝手ですがファンとして応援しています！無理せず執筆活動、頑張って下さい！！！ (8月26日 5時) (
レス) id: bc670cb629 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - めちゃ面白いです！ (2022年1月8日 1時) (レス) @page14 id: 6b84f5d2ae (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 本当に綺麗な文章でした(;_;)夢主視点で進む中で、境界線ってタイトルに相応しいぐらい二人の対比を見事に表現してて圧巻、脱帽です、、いくまちゃんの文字が本当に好きッ。 (2021年10月18日 19時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - 切島くんのお話書いてくれてありがとう！いくまちゃんらしい作風というか、ベタな恋愛ものではないんだけど夢主の中にはずっと切島の存在があるっていうのがなんかすごい好きだった。最後の弔くん出てきた所で色んな意味で心臓ヒュってなりました。 (2021年10月18日 13時) (レス) @page23 id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
うぇすとり?ぁー(プロフ) - 初のヒロアカ夢とっても面白かったです！涙のシーン、挫折のシーン沢山の伏線が一気に最終章で回収されて鳥肌が今も止まりません！境界線のタイトルもとてもセンスがあって良かったです！次回作待ってます‼️ (2021年10月18日 0時) (レス) @page22 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
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