絶対に医者にさせたい先生VS絶対に結婚したいヒロインVS何も知らない男

第1章 交換条件 ページ2

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「馬鹿なんですか？」
「首席です」
「よしとりあえず土下座して、まずはそこから始めようぜ」
「辛辣！」

　場所は変わって此処は俺の担当する美術教師が出入り出来る場所、美術研究室。そこに呼び出したのは学園の誇りと呼ばれる生徒、志崎Aである。

「マジで勘弁してくれよ、お前一応学園の誇りだぞ？こんなモン上司に見られたら干されるの俺だからな？」
「学園のホコリ？私ってそんな嫌われてるんですか？」
「もう帰っていい？」

　頭を抱えながら俺は目の前に綺麗に置かれているプリントと目が合った気がした。コイツ本当に偏差値八十越えの天才なのかよ。もう何も信じられない。

「お前医学部志望だろ。此処は普通医者って書くだろ」
「医者……え？」
「うん馬鹿なの？」

　医学部の意味を分かっていなかった彼女にまたしても頭を抱えた。もうどうしようもない。

「とりあえず、とりあえず志崎。落ち着こう、落ち着くって大事だ」
「私は常に熱血です」
「マジでこちとら煉獄じゃねえんだよしばくぞ」
「冷血！」
「……つーかさ、何、お前志望大学の欄空白ってどういう事？」
「いやだから、卒業後は不死川実弥くんのお嫁さんに」
「うん馬鹿なの？」
「首席です」

　まずい。このままでは非常にまずい。あんなに笑顔で満足そうに笑う教頭の過度な期待を確実に裏切る事となる。志望大学は無しだと。大学に行くつもりがないだと。やばい、かなりやばい。

「おい志崎、よく聞け」
「はい聞いてます」
「お嫁さんという夢は素晴らしいと思う。全然悪くない、むしろ派手に応援する。が、しかしだな。まず先に大学進学だろ？てか今更ツッコむけど何で不死川？」
「私は今ここで不死川くんに一生を捧げる覚悟は出来ていますよ、何なら式は学校で挙げても構わないです」
「うん話聞いて？」

　駄目だ日本語が通じない。この女勉強以外はまるでポンコツなのか、人の話を全く聞き入れない。多分コイツかなり馬鹿だ。馬鹿と天才は紙一重ってこの事だわ。
　ここでひとつ、話の中心人物である不死川実弥という男の話をしよう。不死川実弥という人物は、アイドルでも俳優でも、ましてや有名人でもない。キメツ学園二年二組の男子生徒である。結構女子にモテる野郎だった筈だ。俺には負けるけど。全然負けるけど。

「と言うか、不死川と付き合ってたとか、全然知らなかったんだけど」
「そりゃ知らないですよ、付き合ってませんもん」
「よーしそろそろぶっ叩いていい？」

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