真暗 ページ9
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「ん"ー」
緑茶を飲みながら目の前に座っている宇髄が唸る。まさかこの俺がアイツにキスしたなんて思いもよらなかったのだろう。俺もだよ。
「でももうしちまったもんは仕方なくね?」
「……あァ」
「後悔してんのかよ」
「…当たり前だろ。3年間ずっとアイツの保護者みたいな立ち位置で隣を歩いて来たんだ。今更、…その関係を切ってまでやるべき事じゃァ」
顔を俯かせてそう呟くと、宇髄が急に俺の言葉を被せて口を開いた。
「───その関係を終わらせたいって思ったからキスしたんじゃねぇのかよ」
珍しく真面目な顔付きで宇髄がそう言い放った。顔を俯かせていた俺は思わず顔を上げる。
「不死川、俺は派手にお前らの事が結構好きなんだぜ」
「……宇髄」
「お前らと2年間同じクラスで居たけどよ、やっぱりAの隣はお前しか居ないんだわ」
ニコッと笑う宇髄を、黙って見つめていた。やっぱりコイツはモテる男だ。何となく、心からそう感じてしまった。
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「手伝ってくれてありがとなァ」
「全然構わねぇよ、帰ろーぜ」
一番下の弟を抱っこしながら宇髄は笑っていた。下の子達の保育園のお迎え。小学校の妹や中学生の弟は自力で帰れるが保育園は俺がよく迎えに行く。
時刻は午後6時過ぎ。宇髄は俺の家まで弟を抱っこしてくれて、そのまま帰ってった。帰り際、「お前が派手に動かねェと、どっか行っちまうぞ」と俺にそう言いながら。
「──────分かってる」
どっか行っちまうかもしれない事くらい。このまま終わらせるつもりなんて全くない。
明日、アイツにちゃんと話をしよう。そう思って家で弟妹達の世話をしていた。玄弥とお袋も帰ってきて、夕飯の支度を始める。お袋が帰ってきたから自分の勉強をしようと自室に戻った俺は参考書類を開いて椅子に座った。そして1時間程経過した時だった。
胡蝶Aさんが1人で○○カフェから帰ったのですが辺りも暗くて心配です
胡蝶良ければ迎えに来てくれますか?Aさんの事が心配なら
スマホ画面にそう映った。窓の外を見ると確かに辺りは真っ暗。季節は冬に移行しようとしている。暗くなるのが早いのも当たり前だ。
俺は白いパーカーを羽織り、すぐ自室を出る。リビングに行って夕飯の支度が終わっていたお袋に「ちょっと出てくる。後で飯食うから」と告げ、家を飛び出した。
あの馬鹿、1人じゃ何も出来ねェ癖に1人で帰ろうとすんなよ。
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ポンコツ(プロフ) - すっごいドンピシャに好きな作品でした!! (2022年11月8日 18時) (レス) @page45 id: 16f55af0f9 (このIDを非表示/違反報告)
澪奈(プロフ) - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!!次回作も楽しみにしています! (2021年3月9日 21時) (レス) id: 20f17d6d24 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - さねみんなら、一生お世話されたい!!楽しい作品だったぜィ(^^) (2021年3月9日 21時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 完結おめでとう!!とにかく可愛らしくて勝手に2人の保護者面して見守っておりました…。ゆっくりと2人のペースで進んでる姿が本当に見えてきてこの先も笑い合っていくんだなって思うと本当に素敵な2人!最高なお話をありがとう!次回作もゆっくり頑張ってね!!! (2021年3月9日 20時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - もしゃこうさん» コメントありがとうございます!この作品を最後まで読んでくださり本当に嬉しいです、、!次回作も見てくださるんですか!?ええ嬉しい涙ありがとうございました、! (2021年3月9日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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