へいさねみん【不死川実弥】

本番 ページ22

.




｢俺が渡したかったからいいんだよ。それに飯ご馳走になったし｣

　ふわりと笑って彼がそう言ってくれた。私の耳に付けられたそのイヤリングは、私にはどんな物かは見えないけどきっと彼が選んだ物なら可愛いに決まってる。


｢…可愛い？｣
｢あァ、可愛い｣


　少し照れくさそうにそう言う彼に、思わずにやけ笑いをこぼす。



｢一生大切にするね｣



　誰も居ない事と周りが暗い事を口実に私は彼に触れるだけのキスを落としたのだった。

.



　高3の恋人になって初めてのクリスマスは、勉強漬けで甘さの欠片のないモノだと思っていたが。



　─────とても、甘い思い出になった。



.



　そして月日は変わり、1月。


｢お姉ちゃん頑張ってね｣
｢Aーファイトよ｣
｢…あい｣


　センター試験、当日。



.


　会場について受験票を通し、席に着く。周りの威圧に圧倒されながら持ってきた参考書をとりあえず開いた。理系のさねみんは別室だった。
　さりげなく周りに同じ制服の人を探すが知り合いは1人も居ない。心細いなと感じつつ流石にさねみんに頼れないので1人で静かに勉強した。
　世界史、日本史、国語、リスニング、リーディングと淡々とテストを解いていき初日が終了した。初日は文系科目だった為何とか耐えたと思っている。問題は明日の理科基礎と数学。


｢…ふう｣


　集中力が切れたのか電車の中で1人溜息をついた。人が多すぎてさねみんに会う事はなかった。まあ仕方ない。あの人ごみの中探す気力はお互い残ってないのだから。
　すると電車の中で自身のポケットの中からスマホのバイブ音がなった。


｢！｣


　さねみんからだった。



さねみんお疲れ。初日は文系だから耐えたか?
世界史と日本史かなり自信あり。後は多分それなりに、かな〜
さねみん流石文系。俺も英語苦手だけど手応えあったわ
問題は明日なんだよね
さねみん今まで沢山やってきたろ。数学も理科も、Aなら大丈夫だ
明日も頑張ろ



　そんな会話を見て、頬が緩んだのだった。




　───────明日も頑張ろう。



.




　センター試験2日目。昨日と同じ席について直ぐに数学の見直しノートを開く。今まで解いてきた問題の中で苦手な所や、何度も間違えた所をさねみんと一緒にピックアップしてまとめたノートだ。
　大丈夫、数学は一番やってきた。私なら出来る。



.

採点→←銀色

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す