椅子 ページ4
.
「へいたくしー」
俺の朝はここから始まる。この女、神崎Aは極度の引きこもり、眠たがり、面倒臭がりだ。俺とAが出会ったのは高校1年生の時。同じクラスでさほど席も遠くなかった。話した事はなかったが。
まァソイツは、常に寝ていた。朝学校に来るともう既に机に顔を突っ伏して寝ている。授業中も寝ている。休み時間も寝ている。昼休みは昼食も食わずに寝ている。放課後のチャイムと同時に起き上がって、ダラダラと帰宅する。
何しに来てんだ?
そうツッコミたくなる程ソイツはいつも眠っていた。でも容姿は男の俺から見ても綺麗に整っていて周りの野郎共も話しかけたそうにいつも視線を送っていた。当の本人は寝ているから気付きもしないが。で、俺はご存知の通り強面で元ヤンの面構え。確実に俺とコイツが関わる事はなかった。
───が、そんな日常に転機が訪れる。
席が隣になった。常に寝てる女、神崎Aの隣の席。隣の席になったからって喋る事もねェし関係ねェと思っていた。しかしとある休み時間、友達の宇髄は女共に囲まれて喋ってるしやる事もねェから頬杖をついてボーッとしていた時だった。
「…」
あ、やっと起きやがった。そう思いながら隣で伸びをしている神崎Aの方へ目をやる。眠そうな目を擦りながら欠伸をしていた。そしてもう一度伸びをしようとしたのか、椅子を斜めに傾けて腕を伸ばす彼女。おい、傾け過ぎやしないか。そう思って目を見開くと同時に、やはり傾け過ぎていた椅子は後ろへ倒れ始める。本人は驚く様子もなく「あ、詰んだ」みたいな表情を浮かべて無表情で合掌ポーズをしていた。何でだよ。
「…ッ、ぶねェ……」
そう呟いて俺は自分の席を離れ彼女の座っていた椅子を押さえつけた。周りはガヤガヤし過ぎて窓側の席である俺達の事なんて気に求めてない様子だ。
「…あー、わざわざ、どうもどうも」
気だるげな様子で俺の方を見つめて彼女は合掌ポーズを俺に見せていた。これが俺と彼女の出会い。
それから何故かアイツの事が放っておけなくなり、昼飯を抜いていたら無理矢理食べさせ、授業中寝ていたら無理矢理起こし、階段から落ちそうになっていたら身体を持ち上げ抱え込み、とにかく身の回りの世話を無意識にする様になってしまった。兄弟が多く、その中で長男である俺はこの手がかかり過ぎる女の世話を勝手にしてしまうのだ。
それから2年も同じクラスになった。そして現在、高3。また、同じクラス。
.
233人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うぇすとり?ぁー(プロフ) - 前編読み終わりました!いくまさんのギャグセンス最高でした!へいたくしーが前編の最後のシーンでは言えなくなってしまう甘酸っぱい展開最高でしたっ! (2021年10月13日 22時) (レス) @page50 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
最高 - これはッ!!!絶対にもッッッッと伸びるべきです(迫真)本当に面白いです可愛いです最高です (2021年3月18日 16時) (レス) id: f0ef8aefa1 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます。最初、田中くんの漫画を読んでこんなヒロインを書きたいなと思い執筆させて頂きました。お気付きになられたとは笑これからの展開はオリジナルが多いのでお時間あれば続編も是非ご覧になって下さいね! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - yuenさん» コメントありがとうございます。作品を好きと言って下さり嬉しい限りです……!続編もよろしくお願いいたします! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 田中くんはいつもけだるげだ!! (2021年2月27日 14時) (レス) id: 72ff3a10a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ