へいたくしー【不死川実弥】

夏休 ページ29

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　高3の夏休みなんてあってないようなもの。志望校を大体決め始めてそれに向けて一斉勉強開始、と言っても過言ではない。俺もそうだ。教師になりたいと思い始めたのはココ最近だがその為にはやはり大学進学。数学が一番好きだし極めたいなとも思っていた為、この夏休みは得意科目を十分に伸ばし、苦手である国語や英語を毎日欠かさずやる日程で勉学に勤しんできた。
　そして本日は夏休み最終日。俺以外の家族は出掛けており、1人で自室に籠って勉強をしていた。
　そんな中、ピンポンとインターホンの音が響く。宅配便か？と思いながら俺はモニターを確認するとそこには見知った女の姿が。
　急な訪問に驚きながら俺はボタンを押して｢はい｣と言った。心臓の音が鳴り止まない、来るなら連絡くらいしろよなと心の中で叫んだくらいだ。

｢開けてください｣
｢訪問理由くらい言えやァ｣


　急いで部屋着からちゃんとした服に着替えて玄関のドアを開ける。そこには死んだ目をしながらトートバッグを持った私服姿の神崎Aが死にそうな感じで立っていた。

｢さーねーみーくーん｣
｢……｣
｢…課題終わってないから手伝って下さい｣
｢"あーそーぼー"じゃねェのかよ｣


　いや分かってたけども。


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｢て言うか、高3は殆ど自主学習で課題なんて無いようなモンだろ｣
｢いやいや文系は数学だけたっぷりワークくれたんだよね｣
｢あー、先生が違うからなァ｣

　Aは文系で俺は理系。俺の学校は1から3組までは特進科で4から10組が普通科である。だから1から3組は文理ごちゃ混ぜのクラス分けだ。皆平等に分けられている感じ。
　だから俺達の仲良い宇髄や煉獄、伊黒達は皆大学進学を目指す特進科なのだ。未だに冨岡が特進科に居るのが分からないが。多分胡蝶のスパルタ教育だと思うが。

｢数学がたんまり残ってます。アオイにバレる前に終わらせないとヤバい｣
｢数学の先生より妹かよ｣
｢おじいちゃん先生は"円描くの上手ですね"って褒めたら多分評定5くれる｣
｢くれねェよ｣


　先生泣くぞ。


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｢ついこの前始まったばかりだと思ってたのに…｣

　"夏はあっという間だ"と言いながら俺が出した麦茶を飲む彼女。俺は折りたたみ式の机を出してその上に自分の勉強道具を並べた。

｢先に課題提出を優先しろ、ひとつも終わってねェのかァ？｣
｢本気出したんだけどね｣
｢一応やろうとはしたのか｣
｢この1週間頑張ったんだけどな…現実逃避｣
｢頑張るとこ違ェよ｣


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