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172:ギャルと逃げ足 ページ22

押し当てた感触には、脳味噌が溶けていくような感覚を覚えた。
きっと、溶けてどうしようもなくなって、このまま噛み付いて食い散らかしたい衝動に駆られるんだろうな。

それは我慢しろよ、僕。
絶対嫌われるぞ。

Aがどういう意味で「しないの?」と尋ねたのか、今の溶けた脳味噌では何も考えられなかった。

目の前でされた行いが、気持ちよくて仕方がない。


Aが僕の胸をとんと押す。

なんで?もうダメなの?まだしようよ。

言いたい気持ちを飲み込んで、けど気づけよという気持ちを込めて離れながらAをじっと見た。
離れた時に漏れた、熱を持つ吐息。
余すこと無くそのまま塞いで、もう一度口の中に押し戻してやりたい。

わざとらしく、僕の胸を押した手を取り指同士を絡めてやった。
僕はこんなにも今下手に出てますよ、って。

「悟、」

「ん?」

いつもの倍毒気のない返事をする。
すると、目の前のAは悟ったような不思議な笑みを見せてきた。
え、何、その顔。


「そろそろ、逃げずに向き合ってみるよ」


ありがとね、Aは言い残すと置き土産の様に僕の頬に触れるだけの口付けをして応接室から出ていった。
固まる僕を分かっていたかのように押し退けて、逃げるように出ていく姿。

ぴしゃりと扉が閉められ、僕は漸く動けるようになった。
唖然としたまま、僕は頬に手を当てる。


今、ちゅーされた?
Aから?
まじぃ?


「マジかも。」

いやいや、その前に口同士でしたでしょ。
とは思うが、それよりもAからしてきた方が重要だ。
なんだ今の。

「なんだ今の!!?」

一人で馬鹿みたいに騒いで、勝手に真っ赤になる。
そして、すぐさまハッと気づく。

「もしかして逃げられたのか!?」

あの人、やましい事があるとすぐ逃げるんだよ!!
気づき急いで扉を開け廊下を右左と確認するが、長く続く廊下にAの姿はない。
それもそうか、あの人のことだ逃げ足早いんだよな。

しっかし……

ずるずると壁に凭れ、目隠しを引き下げる。
死ぬほど顔が熱い。


「アレはクセになるなぁ……」


どういうつもりなんだ、あの人。





____。



資料室に逃げ込んだAは、ぐっと背伸びをした。
Aは学生時代から、逃げるならここと決めている。

まーた、逃げちゃった

「でも、これが最後」


もう次からは逃げない。
気づいたんでしょ、自分。


「悟のことも、自分のことも、もう逃げない」


過去に縛られるのは、もう散々だ。

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鼻毛太郎(プロフ) - 華花。さん» コメント有難うございます!これでいいのか...?と悩む時期が続いていた中、温かいコメントを頂けて本当に泣くほど感謝してます;;現在5章目を製作中なので、しばしお待ちを…!今後もギャルと呪術を宜しくお願い致します! (2021年4月21日 11時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - いつも緊張して送れませんでしたが初コメント失礼します!もう作者様は言葉選びから構成まで最高すぎます…素敵な作品を生み出してくれてありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年3月1日 0時

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