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095:ギャルと”悟” ページ45

昂る切なさが、夏の温度に沸騰しそうになる。

沸騰して蒸発したら、僕は遂にAの目の前にあるのものを全部壊すだろうな。
けど、そんな事をすればAは黙って一人で三途の川を渡ろうとする。

遠くに行ってしまわないうちに、少し急ぎ目でAの手首を掴んだ。

「先輩、帰ろ」

頭一つ分以上違うAが、緑色の瞳で僕を見上げる。

A、もうこの話はよそう。

Aが僕の顔を見て何を感じたかは知らないけれど、暫くしてAはふっと表情を緩めた。

「帰ったら、明日が始まっちゃうじゃん」

「帰らなくても明日は来るでしょ」

Aの言葉を不思議に思って僕が言うと、Aは少し俯いて「…うん」と呟いた。

「…明日が来るのが怖いの?」

僕は尋ねる。

Aの手首は想像以上に細かった。
僕の手がデカいだけの話なんだけど、僕は唐突にその細さを前にして女の子を感じた。

Aは眉を下げ笑みを浮かべる。

「そうなのかも。笑うなよ?」

あまりにも意外で、僕は固まった。
笑わないよ。笑わないけど、A…何かあったのか?
言いたかったけど、声が出なかった。

悟、とAが呼んだ。


「このまま一緒に逃げちゃおうか」


その瞬間、僕の胸は恐ろしく波立った。
体中の血液が駆け巡る。
衝動で動く5秒前。
5…4…、ごめん無理、待てが出来ない。


抵抗出来ない本能。


「悟、何し…、」


ぐっと顔を近づけた。









「なんつって」

Aはパチパチと瞬きする。
唇にぴとっと引っ付けられた冷たいアイス。
ソーダ味の棒アイス。

「あげる」

「あ、うん、うん?」

まだ袋に仕舞われたアイスをAは僕の手から受け取る。
不思議そうな顔をして、Aはアイスを見つめていた。
僕はAの手首から手を離し、「先輩、溶けちゃう前に帰ろ〜」と少し先を歩き出した。


本当は、Aの顔をまともに見られないだけだった。

自分の行いに心底僕は驚いている。
唇を重ねそうになる手前、僕は正気に戻りなんとか誤魔化す手段を思いついた。
ダサい。ダサすぎる、アイスで誤魔化すとかダサすぎる。



だって、僕は今……確実に____



自覚すると、より恥ずかしい。

掴んでいた手が死ぬほど熱い。
早すぎる心拍数に、この場で倒れるんじゃないかと思う。
恥ずかしくて、泣けるもんなら泣きたい。

誰か助けてくれ。
いっそのこと言ってくれ。



衝動でキスしようとするとか、お前は馬鹿なのか?



いっそそう言ってくれ。

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鼻毛太郎(プロフ) - Reginaさん» コメントありがとうございます!遊びに来て頂き誠に嬉しいです😭🤍作品の楽しみ方も、書いている側としてはとても嬉しく、本当余すことなく楽しんで頂けてとってもらぶ…… 本編、まだまだ続きますが、是非楽しんでいってください!! (2月1日 12時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
Regina(プロフ) - 高専編から読ませていただいて本編に来ました!内容はもちろんのこと、毎度イメソンが天才すぎてイメソン聞きながら読み返したりしてます!エンディング波のゆくさきで考えていらしたのも物語の深さにマッチする曲だと思うのですごく感動しました!!応援してます! (2月1日 11時) (レス) @page50 id: c70aaf3a6d (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 伝説のパンダさん» コメントありがとうございます!!いえいえ、全然大丈夫ですよ!!4本もシリーズがあるので、流石に間違えることもありますよね...私でさえ「これ3だっけ、4だっけ」ってなるので…0の方も読んでいただきとっても嬉しいです!!まだまだ続くので、今後もお楽しみに! (2021年3月8日 9時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
伝説のパンダ - 申し訳ありません。4のほうにコメントしたつもりが、なんらかの手違いでこちらにコメントを飛ばしてしまったようです。本当に失礼なことを…次はもう少し興奮が引いたときにコメントします…すみません…。 (2021年3月8日 8時) (レス) id: ec9a309dee (このIDを非表示/違反報告)
伝説のパンダ - もんのすごく面白いです!!!夢小説はめったに読まないので、まぁ暇つぶしに…と思って読み始めたのがこちらの作品で、不覚にも大沼にハマってしまいました…本当に好きです!0のほうのお話、パパ黒大好きなのでそちらも凄く好きです!今後も応援してます! (2021年3月8日 8時) (レス) id: ec9a309dee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月19日 3時

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