072： 苦しいんだろうか ページ25
しと、しとしと、しと。
いつから雨の音が混じったのか。
気づくと、Aの鼻を啜る音の中に雨音が増えていた。
ちらり、横目でAを見る。
未だに、ヒソカの首へ腕を絡め首元に顔を埋めるA。
ヒソカが手を伸ばし、Aの細い首から項に少しだけ触れてみた。
怒ってこない。
そのまま、触れて撫でる。
細くて、頼りない感じだ。
Aはいつだって、凛として冷たくて淡々としていて怖いものなんて何も無い様な顔をしている。
けれど、本当は違う。
この項と首みたいに、頼りない部分を隠しているだけに過ぎない。
弱い部分のAを、ヒソカは初めて見た。
今日、ヒソカはクロロからこんなことを言われた。
『お前最近、丸くなったな』
と。
その時こそ、この人は何を言っているんだと眉を顰めたが今はそうかもしれないと思う。
Aと居ると、突然目の前のことが全部どうでも良くなる。
不思議だ、ヒソカがAの項にもう一度触れようとした時、ぽつりとAが言葉を零し始めた。
｢…最低だ。｣
思わず、ヒソカはぴくんと指を跳ねさせる。
｢…私は、随分最低だ｣
項と首を触った事ではないらしい。
Aが、酒で掠れた声で言う。
｢……たまに、目の前にあるもの全部…壊したくなる。大事なもの全部よ。友達も、家族も…。壊したその先に、何があるのかなって。………守るものがあるって、凄く面倒だ…。｣
独り言のように、けれどヒソカが聞いてるであろう前提で話していく。
｢他人の心臓を奪う時、時折そう思うの。…全部壊せば、楽なのにねって。………私は、苦しいんだろうか。｣
Aは言いながら笑わない。
｢…大事なものなのに……滅茶苦茶に壊したくなるなんて、私は…最低だ。………ねぇ、私は苦しいんだろうか。苦しんでるんだろうか。｣
あぁ…この子は＿＿＿＿
ヒソカはAの言葉を最後まで聞くと、Aの背に腕を回し引き寄せた。
そして、ぽんぽんと撫でる。
｢君、疲れてるんだよ♢｣
｢疲れてない…｣
｢泣きながら言ってちゃあ、説得力ないよ♤｣
背と膝裏に腕を回し、Aを抱き上げる。
やっぱり、頼りない軽さだ。
｢泣いてない…｣
Aは言うが、同時にぐすと鼻が鳴ったのをヒソカはしっかり聞いた。
｢はいはい、泣かないの泣かないの♤｣
ひたひたと歩き、ベッドまでAを運ぶ。
｢今日はもうお開き、寝なさい｣とヒソカは、Aを布団の中に埋める。
Aは恨めしそうな顔をする。
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鼻毛太郎(プロフ) - rinochan810さん» ありがとうございます；；とっっても嬉しいお言葉…！読みながらドキドキして下されば、夢書きとして本望です…！これから2人の関係が徐々に変化していくので、楽しみにしていてくださると有難いです！ (2020年9月14日 23時) (
レス) id: 2a028e4c13 (このIDを非表示/違反報告)
rinochan810(プロフ) - あの、本当に素敵です…ドキドキさせられてます…。いつも楽しみにしています。これからも応援してます…！ (2020年9月14日 19時) (レス) id: 06f6601bca (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ミリさん» コメントありがとうございます！文章に関しては、普段文字量が詰め詰めで申し訳ない…と思いながら書いていたので、そう言って頂けると凄く嬉しいです；；今後も、更新が遅くなる日もございますが宜しくお願いいたします！！ (2020年8月20日 17時) (レス) id: 16ef441d86 (このIDを非表示/違反報告)
ミリ - はじめまして。リメイク前の作品も読ませていただきました!!どちらも面白かったですし、文章も読みやすかったです。絵もステキですね!!!これからも読ませていただきます!!! (2020年8月19日 14時) (レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - Aaaさん» リメイク前の作品まで読んで頂けるとは…！とっても嬉しいですありがとうございます！！今後も、ちまちま細々と更新していきますので是非最後までお付き合い頂けると有難いです…！ (2020年8月10日 21時) (レス) id: 2a028e4c13 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鼻毛太郎
| 作成日時：2020年7月27日 0時
