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049: とある ページ2

月明かりに照らされた男の手に、厚い本が浮かぶ

その本はバラバラと勝手にページを捲らせ、男が止めて欲しいページに差し掛かるとぱたりと動きをやめた。

ページは、他のページに比べどこか質素だった。

文字は記されているが、他のページのように写真はない。

「……」

男はいつも通り、その本に自身の力を注ぐ。
しかし、おかしな事に自身の周りに何かが起こった気配はない。

またか…。

そう思うと同時、男は背後から何か大きな獣に睨みつけられた感覚を感じ勢いよく振り返る。
ずきり、と腹部に痛みを感じた。
先日の激しい戦闘により得た傷が、まだ癒えない。

背後には何も潜んでいなかった。
ただただ、深く静かに冴え冴えとした闇が広がっているばかり。

男は腹部に手を添える。ずき、ずき、と疼いているのを感じる。


暗闇の中、目の前に現れたあの女。

恐ろしい程に強かったな…。

久しぶりに、舐めてかかると本気で命を持っていかれると感じた。
それでも、女の能力を盗んだのは確かなはず。
何故能力は姿を現さない。


俺の能力が可笑しくなった……いや、そんなわけはない。


他の能力も試したが、いつも通りに発動できた。
だとしたら、可笑しいのは自分ではなく盗んだ方だ。

「ふぅ……」

男は窓際に腰掛ける。
あの女の瞳の青さが忘れられない。

闘争心の狂気と、無慈悲な冷たさ。
2つを兼ね備え、海のような色をした瞳に俺を映す。

もう一度、あの女に会えるような気がする。

「…」

男は懐から携帯を取り出すと、慣れた手つきで電話をかけた。


「…あぁ、俺だ。突然悪いな、調べて欲しいことがある。」


俺とあの女は、もう一度会う。
何がとは言わないが、男にはその確信があった___。

050: 名目上の→←048: 前回までのあらすじ



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鼻毛太郎(プロフ) - rinochan810さん» ありがとうございます;;とっっても嬉しいお言葉…!読みながらドキドキして下されば、夢書きとして本望です…!これから2人の関係が徐々に変化していくので、楽しみにしていてくださると有難いです! (2020年9月14日 23時) (レス) id: 2a028e4c13 (このIDを非表示/違反報告)
rinochan810(プロフ) - あの、本当に素敵です…ドキドキさせられてます…。いつも楽しみにしています。これからも応援してます…! (2020年9月14日 19時) (レス) id: 06f6601bca (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ミリさん» コメントありがとうございます!文章に関しては、普段文字量が詰め詰めで申し訳ない…と思いながら書いていたので、そう言って頂けると凄く嬉しいです;;今後も、更新が遅くなる日もございますが宜しくお願いいたします!! (2020年8月20日 17時) (レス) id: 16ef441d86 (このIDを非表示/違反報告)
ミリ - はじめまして。リメイク前の作品も読ませていただきました!!どちらも面白かったですし、文章も読みやすかったです。絵もステキですね!!!これからも読ませていただきます!!! (2020年8月19日 14時) (レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - Aaaさん» リメイク前の作品まで読んで頂けるとは…!とっても嬉しいですありがとうございます!!今後も、ちまちま細々と更新していきますので是非最後までお付き合い頂けると有難いです…! (2020年8月10日 21時) (レス) id: 2a028e4c13 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年7月27日 0時

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