303:一枚壁 ページ5
「あーあ、」
キルアは天を仰ぎながら声を上げる。
「その事についても、姉貴にメールで書くべきだったなぁ」
飛行船で、ゴンの後にキルアもAへとメールを送っていた。
家族の事と、試験の事。
姉であるAに、キルアは言いたいことが山ほどあったのだ。
そして何よりも、もう一度姉に会いたかった。
会って、顔を見て、謝りたかった。
これでもキルアは顔に出さないが、かなり負い目を感じているのだ。
アレだけ熱心になってくれた姉の気持ちを、『もういいよ』という短い言葉だけで粉々にしてしまった。
姉から返ってきたメールを見るのが少し怖い。
「キルアの目的は、これからAに会いに行くって事でいいかな」
「あぁ。姉貴とヒソカがまだ一緒にいるなら、ゴンはヒソカにも会える」
「一石二鳥ってやつだね!どうする?それまで何する!?」
「何って、特訓するに決まってんだろ。…お前、まさかそれでヒソカと戦うつもりだったのか!?姉貴にすら一発も与えられねーぞ」
キルアの言葉に、ゴンは「あれ?」と小首を傾げた。
「姉貴にすらって…キルアの中だと、Aはヒソカより弱いの?」
「弱いって言い方すると語弊があるけど、うーんなんて言うのかな…」
キルアはその辺に落ちていた木の棒で、地面に絵を描き始めた。
左星と涙のペイントを持つ人間、そのすぐ横に髪の長い人間、そこから少し離してつるっぱげの人間。
「これがヒソカ。その隣はAな。姉貴の方が弱いって言っても、戦い方によってはアイツが全然勝つ。そのくらい、二人の差は大したものじゃねーよ」
キルアがしゃがんだ横に、ゴンもしゃがみ耳を傾ける。
「簡単に言えば、このレベルになると強さだけで物事の勝敗はそう簡単に決められなくなる。スピード戦に持ち込めば、姉貴の方が断然ヒソカより上だと思っていい。けど、パワーだけで言ったらヒソカの方が上だろうな」
で、こっちはハンゾー
キルアはつるっぱげの絵を枝の先で指す。
「Aとハンゾーの差は絵で描くとこんだけしかねーけど、その代わりこの間に壁が一枚ある」
「壁?」
キルアはこめかみをトントンと叩いた。
「一本ネジが外れてるかどうかだよ」
言われて、ゴンはまじまじとキルアを見つめた。
「姉貴って話してみると普通だろ?でも、しっかり殺し屋だからな。認めたかないけど、そういう所がヒソカと波長合うんだろ」
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鼻毛太郎(プロフ) - アネモネさん» ありがとうございます!とっても嬉しい限りです…;;夢主好きになってくれるなんて、めちゃくちゃ嬉しい…律儀というか天邪鬼というか健気というか純粋というか、そんな夢主ですが今後も宜しくお願い致します…!! (2021年7月25日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
アネモネ(プロフ) - 面白すぎて、一気にここまで読んでしまいました………。今まで読んできた夢主ちゃんの中でトップレベルで好きです…!!ヒソカとの絡みで素直になれないところとか本当に可愛すぎます……!!作者様のペースで、これからも更新頑張ってください! (2021年7月24日 18時) (レス) id: 3b50ba95a6 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ☆さん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいお言葉頂けてモチベ上がります;;ヒソカもお姉さんもこれからまた関係が動いていったり、第三者が介入してきたり今後色んな事が起こりますが、是非今後も楽しんでくださるとありがたいです!お楽しみに!! (2021年7月9日 22時) (レス) id: 16ef441d86 (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 続編おめでとうございます。物語の構成があまりにも面白くて、大好きな作品です。ヒソカの性格も私の思い描いている通りで、また、彼と絡む夢主ちゃんの強さや弱さがとても大好きです。これからも無理なさらずに頑張ってください! (2021年7月9日 20時) (レス) id: 56780b611d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年7月9日 1時