276:案内してあげる ページ28
医務室で、ゴンはキルアが何をしたか聞いたのだろう。
きっと、キルアが人を殺したことも。
それでも、ゴンの口からは”友達”だという言葉が出た。
力強く、真っ直ぐな声音。
腹の底からこの言葉は出されたんだ。
そうだ。
そうだった。
Aは思い出す。
何もしてやれなかったなんて思ったけど、キルには”友達”が出来たんだ。
あの子を支えてやれるのは、もう私だけじゃない。
そして何よりも、Aは知る由もないがゴンをここまで突き動かしたのは、Aの存在だった。
サトツは、ゴンにことの詳細を伝える中で言ったのだ。
『Aさんは、実の双子であるギタラクル__イルミに対して、相当な剣幕で言っていましたよ。人間が友達を望むのは当然だと』
その言葉で、ゴンの中で全てが繋がった。
どうしてキルアは、お姉さんの話をする時あんなにも嬉しそうなんだろう。
キルアのお姉さんってどんな人なんだろう。
どうして、キルアはお姉さんだけは別だって言うんだろう。
それなのに。
それなのに…!!
Aが弟を思う心を、お前は同じ弟なのに踏み躙ったんだぞ。
「キルアのところに案内しろ」
「行ってどうする?」
「決まってんじゃん」
ゴンの語気が一層強まる。
「連れ戻す。自分の意思じゃない!そうじゃないのに、出て行ったんだ」
「決めつけるのはどうかと思うけどな」
「お前は、自分のお姉さんの気持ちもキルアの気持ちも、踏み躙ったんだぞ」
その言葉に、イルミの真っ黒な瞳から影が生まれる。
「お前が、姉さんについて語るのか?」
突如として生まれた黒く渦巻く空気。
なんだこれ、ゴンの手が緩まりかけた時「ゴン君!」と後ろから声が投げられた。
ゴンが目を向けると、ひな壇の後ろの方でウサギ頭を脱いだAが立っていた。
「案内してあげる」
「姉さん…」
Aの言葉に、イルミは小さく驚いたなと呟く。
ゴンはAの言葉に表情を明るくさせた。
「本当!?ウサちゃん、じゃなかったキルアのお姉さん!」
Aは強く頷く。
「さっきまで、キルの合否のことで議論していたの。でも、先生…ネテロ会長の性格上この後も合否が変わるなんて事はない。そうですよね、先生」
Aが一番前に立つネテロへ投げかけると、ネテロはうむと頷いた。
「何人かから異議申し立てが唱えられてな。しかし、キルアの一連の流れに不当性は見出せない。よって、失格は失格じゃ」
ネテロは、クラピカとレオリオに目を向けながら述べる。
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鼻毛太郎(プロフ) - みこさん» コメントありがとうございます!新しい扉開けたようで、私としてはとても嬉しい限りです限りです😂現在進行形で長く続くシリーズではありますが、是非引き続きお楽しみください!! (2022年6月1日 22時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
みこ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます...!実は私ヒソカさん、可もなく不可もなくくらいだったのですが...この話を読み始めたらなにやら目覚めました...笑← 一気に読み進めてしまい、夢中になっております!!続編もウキウキしながら楽しみに読みます!! (2022年6月1日 20時) (レス) @page50 id: e77f4d9956 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ポテトさん» 毎回ポテトさんからコメント頂けて本当に有難いです;;私こそ、ポテトさんからのコメントを楽しみにしているんですよ…段々クロロとのシーンが刻々と迫ってきていますね…私自身も皆さんにお見せできる日を楽しみにしています!こたらこそ、以降も宜しくお願いします! (2021年7月9日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ポテト(プロフ) - 続編おめでとうございます。本当に一話一話を読むのが、楽しいです。これから、お姉さんがクロロとどう関わっていくか楽しみです。ヒソカとの、いつもの会話が久しぶりに見れて、「やっぱりこれだよな」と思い、最高でした。これからのお話も楽しみにしています。 (2021年7月8日 22時) (レス) id: 1bfcbf4b39 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ポテトさん» ああありがとうございます;;凄く達成感を感じますね…この展開、ネタ帳を見たら昨年の9月に決まってたみたいでビックリしました。温めていたものを皆さんに見せられてとても満足しています。神回まで言われて、本当に嬉しい限りです…;;;; (2021年6月29日 0時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年5月30日 0時