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273:無力 ページ25

冷たい黒い眼が、Aを静かに見つめる。

「そんなの姉さんにしか出来ないし、姉さんしかやっちゃいけない。成し遂げちゃいけない」

狂気を孕み、姉を崇拝する。
けれど、その行き過ぎた崇拝はイルミの中に偶像のAを生み出してしまう。

あくまでも純粋に心の底から想い合う双子。
だが、一枚皮を外した途端、狂気が顔を覗かせるのだ。

「俺はね、姉さんの事は大好きだよ。でも“それ”だけがどうしても理解出来ないんだ。双子なのにね」


姉さん、何に怒ってるの?
キルは立派にしてやらないと
姉さんだってそれを望んでるだろ?


訴える瞳に、Aの胸ぐらを掴む手が力を増す。
口を開きかけると、後ろからか細い声がした。

「姉ちゃん、いいよ。もう」

「…っ、」

呟き零すようなキルアの声。
もういい、いいよ。と告げたキルアの言葉に、Aは振り向く。

綺麗な青い瞳は影を帯び、濁った暗い色を見せる。
光は指さない。俯いて、Aを映さない。

抜けていくAの腕の力。
胸ぐらを掴む手がゆるゆると解けていく。

弟の名を呼ぼうと開かれた口が、徐々に小さく閉じられていく。

少しだけ笑ったキルアの口元。だが、目だけは何も映していない。


「いいよ、姉ちゃん」


キルアがAの横を通っていく。
引き止めたかったが、Aの手は動かなかった。
弟の濁った瞳を見て、Aはどうしたらいいのか分からなくなったのだ。

なんで、どうして、私を頼ればいいじゃない。

キルアがAに顔を向けた。



「姉ちゃんが俺の姉ちゃんで、本当に良かった」



それでも、キルアの瞳は光を映さなかった。








____。



キルアは、1人を殺し試験を終えた。
正確に言えば、失格。


何も出来なかった。
Aは、その日圧倒的な無力さを知った。


誰かを殺してしまうことに、Aは価値の大きさを見出したことは無かったが、それでも間違った殺しなのだけは理解していた。


イルミに対しても怒ることは出来ない、抜け殻のような気持ちだけが残る。


「A」


名を呼ばれ顔を上げると、試験会場にはもうヒソカと自分以外残っていなかった。

「顔色が悪いよ♢」

爪の長い手が頬を撫でてくる。
誰にも構って欲しく無かったが、ヒソカだけは何故だか特別だった。

「私、何も出来なかった」

俯き呟く。

「ボクはそうは思わないけど♤」

その言葉に、Aは顔を上げる。

274:誰だと思ってんの→←272:失格



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鼻毛太郎(プロフ) - みこさん» コメントありがとうございます!新しい扉開けたようで、私としてはとても嬉しい限りです限りです😂現在進行形で長く続くシリーズではありますが、是非引き続きお楽しみください!! (2022年6月1日 22時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
みこ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます...!実は私ヒソカさん、可もなく不可もなくくらいだったのですが...この話を読み始めたらなにやら目覚めました...笑← 一気に読み進めてしまい、夢中になっております!!続編もウキウキしながら楽しみに読みます!! (2022年6月1日 20時) (レス) @page50 id: e77f4d9956 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ポテトさん» 毎回ポテトさんからコメント頂けて本当に有難いです;;私こそ、ポテトさんからのコメントを楽しみにしているんですよ…段々クロロとのシーンが刻々と迫ってきていますね…私自身も皆さんにお見せできる日を楽しみにしています!こたらこそ、以降も宜しくお願いします! (2021年7月9日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ポテト(プロフ) - 続編おめでとうございます。本当に一話一話を読むのが、楽しいです。これから、お姉さんがクロロとどう関わっていくか楽しみです。ヒソカとの、いつもの会話が久しぶりに見れて、「やっぱりこれだよな」と思い、最高でした。これからのお話も楽しみにしています。 (2021年7月8日 22時) (レス) id: 1bfcbf4b39 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ポテトさん» ああありがとうございます;;凄く達成感を感じますね…この展開、ネタ帳を見たら昨年の9月に決まってたみたいでビックリしました。温めていたものを皆さんに見せられてとても満足しています。神回まで言われて、本当に嬉しい限りです…;;;; (2021年6月29日 0時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年5月30日 0時

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