453:ギャルと世界構築 ページ3
____。
22時30分、Aは未だに街中を走り回っていた。
「っ、は、は、」
一体何十分全速力で走り回ってるんだ。
Aの息があがる。心臓がいつもより早く脈打つ。
普段のAは、微妙な引力を操作し走る足の回転数をあげていた。
それを行うことで、通常の自身の足よりも早く動くことが出来るし、何よりも術式により強制的に足を動かす事で疲れを軽減することが出来ていたのだ。
それが今や全くできない。
「マジで、くそッ、あの脳みそ野郎…ッ」
思い出すだけでも腹が立つ。
学生の頃はこの程度で息なんて上がらなかったというのに。
便利な能力にかまけて頼りきっていた結果だ。
「オッサンに、扱かれてた時代は、そんなことっ、なかった、のにっ、」
あっちでもない、こっちでもない。
Aは街中を走り回る。
あーくそ、さっきから『オッサン』のこと妙に思い出しちまう
Aは、唇の裏で舌打ちを打った。
脳裏に浮かび上がるのは、『オッサン』こと『伏黒甚爾』が双眸に弧を描かせ長い舌を出しゲラゲラ嘲笑ってくる図だ。
Aの中の伏黒甚爾という男は、大体こんな感じである。
「気分最悪ぅ〜〜」
わざとらしく唇を突き出すA。
こんなに彼のことをやたらと思い出してしまうのも、どれもこれも数十分前に彼の気配を感じたからだ。
そんなはずないというのに。
彼は、何十年も前に死んだ。
Aはそれを目の前で確認しているし、死を看取った。
『ねぇ、先輩とこいつの関係って何』
看取る傍らで、当時まだ後輩であった五条に訊ねられた際Aはこう答えたのを未だに覚えている。
『暴力だけで私の世界を作った人』
友人であり、敵であり、味方であり、初恋であり、師であり、教科書であり、嫌いであり、好きであり、目標であり、Aにとって伏黒甚爾は“世界”だったのだ。
今もそれは変わらない。
変わらないけれど、あの日を境にそれは思い出へとAの中で変換された。
そう、思い出だ。決して、まだそれに囚われているわけじゃない。
「だあぁぁぁぁーーー!!!!マジでむしゃくしゃするーーー!!!!」
走りながら頭を掻き毟る姿は相当滑稽なことだろう。
「くそくそくそくそッッ!!!やらなきゃなんない事山程あンのに、どうして私は居るはずも無い人間探しちまってんだよくそォッッ!!!」
あの時一瞬だけ感じた気配。
それをAは、辿ってしまっていた。
居るわけないのに。それなのに。
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プルメリア - ありがとうございます!頑張りますね! (2023年1月9日 7時) (レス) @page5 id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - プルメリアさん» 出来てますよ…!多分、宿儺のやつですかね…?まだ中身を確認していないので、あれですが投稿自体は出来てますよ…! (2023年1月8日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - えっと、あの、忙しかったらいいです!ただ、きちんと投稿できているかだけ...お願いします... (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 私、試しに投稿してみたんですが...きちんと投稿できているか心配でして。少し確認してくれませんか? (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 本当に嬉しいです! (2023年1月8日 14時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2022年11月27日 22時