465:ギャルと阿吽 ページ15
さっと術式のための手印を構える伏黒に、器用に手早く腕を縛り、最後には端を歯で引っ張り締めるA。
正体不明の凄まじく強い男。
先程までじっとしていてくれたのは、何かあるのだろうか。
考えても仕方ない。馬鹿みたいに強いことに変わりないのだ。
「『脱兎』」
「出せます」
「『鵺』」
「出せます」
「『渾』」
「なるべく避けたいです」
Aが、何と言わずとも伏黒は的確に言葉を返す。
Aは、彼の最後の言葉を聞くと「私もだ。破壊される可能性がある」と続ける。
男は、不気味な程に緩慢な動きで、腰を低く屈めると游雲の先をこちらに向けて片手を添えた。
突きの姿勢。
「さっきの二つだけで行く」
「了解です」
伏黒のきっかけに、Aが動いた。
地を蹴ったその瞬間、音が遅れてやってくる。
天与呪縛でもないのに化け物かあの人は。
脳で思いつつも、伏黒は遅れを取らない。
既に『了解です』の時点で『脱兎』を展開している。
街中に無数に出現する兎の数々。
兎達はすぐに個々の姿を覆い隠してしまう。
この流れはさっきもやった。
アイツは真っ直ぐに突っ込んでくる。
だから、『脱兎』と言った時点で俺は動いたんだ。
そして____、
真っ直ぐ。
いいや、伏黒の気配だけを瞬時に察知して向かう方向を変えた男が、この撹乱した兎の中を突き破ってくる。
それも、伏黒には分かっていた。
自身に向かって的確に、気配だけを頼りに男が突っ込んできた。
伏黒は、自身の思い描いた想像だけを頼りに、びたりと止まる。
「...ぐッ、」
脇腹に走る激痛。
だが、これでいいのだ。
「読み、通りだ...ッ」
あの時自分が止まらず逃げていたら、腹部貫通は間違いなかった。
この人間離れした男なら、『そんな馬鹿な』ということは大抵出来るのだ。だから、『そんな馬鹿な』と自分が思うことを脳に描いて、その裏をかいただけの話。
伏黒は脇腹に刺さった游雲を片手で掴む。
「ははッ...、やっぱりアンタ、イカれてますね...Aさん」
その瞬間、一斉に『脱兎』が消えた。
術式を解いたのだ。
何故なら、Aを“影”の中から排出するために。
「...ッ!」
確実に男の背を取ったA。
これには男も驚きを隠せなかったのか、反応が数秒遅れる。
Aの手には、何も無い。
それで良かった。
そうでないと、伏黒が広げた影の中に入れなかったから。
そして、タイミング良くそれを補うために空から降ってきたのは____桐壺。
1213人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プルメリア - ありがとうございます!頑張りますね! (2023年1月9日 7時) (レス) @page5 id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - プルメリアさん» 出来てますよ…!多分、宿儺のやつですかね…?まだ中身を確認していないので、あれですが投稿自体は出来てますよ…! (2023年1月8日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - えっと、あの、忙しかったらいいです!ただ、きちんと投稿できているかだけ...お願いします... (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 私、試しに投稿してみたんですが...きちんと投稿できているか心配でして。少し確認してくれませんか? (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 本当に嬉しいです! (2023年1月8日 14時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2022年11月27日 22時