034:有為転変 ページ34
「………見送りしてくれるとか、きしょ」
「なぁ、お前のそのきしょってのは口癖かぁ?」
本日の稽古_と呼ぶのが正しいかは置いといて_を終えたAは、いつも通り寮へと帰宅しようとしていた。
普段ならば、甚爾は本堂の床に寝そべり「おー帰った帰った」と見送りすらもしてくれないのだが、今日はなんだか違う。
寺院の前まで出てきてくれて、見送ってくれるらしい。
Aからしてみればなんだか気味が悪かった。
「ねぇ、私オッサンになんかした?」
「何も」
なんて言う割に、甚爾はニヤニヤと笑みを浮かべたままだった。
やっぱりきしょすぎ。
Aはさっさとここから退散しようと石階段を降りかけたその時、ふと何を思ったのか甚爾へと尋ねた。
「オッサンってさ、本当は何の仕事してんの?」
ただなんとなく尋ねた。
甚爾には、呪力がない。呪術師ではない。
しかし、自身の母親は呪術師であった。
甚爾は前に言ったのだ、その母親の手伝いをしていたと。
一体なんの手伝いをしていたのだろう。
考えても見れば、Aは甚爾の事を殆ど知らなかった。
甚爾が口を開く。
「ガキには言えない仕事」
「はぁ?じゃあ何、デカくなったら教えてくれんの?」
「さぁな」
甚爾はニタニタと相変わらず何を考えているか分からない笑みを浮かべ言った。
まともに聞くんじゃなかった、思ったAは不貞腐れたように「はいはいじゃあね!」と石階段を降りていった。
1回も振り返らなかった。
結局、甚爾がいつまでそこに居たのかは知らないし、どんな顔を本当はしていたのかも知らない。
オッサンは、何を思って私の世話を焼いてくれるんだろう
教えてくれないだろうし、考えるだけ無駄だ。
____。
時刻は遡る。
夜蛾はたった1人の生徒との授業を終えると、上層部の会議へと出向いた。
議題は、尾道から聞かされた例の任務についてだ。
「現場からは名取吉祥の残穢が出たのだろう?だったら、例の呪詛師も彼で間違いないだろう!?」
「断定が早すぎるんじゃあないのかね?残された残穢は、彼に似たものというだけでそうだとは言いきれないらしいじゃないか」
「大体、今回殺害された術師は一級だと聞いたが?名取吉祥、彼は三級だろう」
「いいや、それ以前に名取吉祥の身柄を確保していた陣営はどうなっている!?責任追及が終わったとは言わせんぞ」
夜蛾の頭の上では、不毛な会話が続いていた。
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時