人間味しかない貴方が好き② / 霊幻新隆 (ページ4)

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▼3話ページ4

｢…A｣
｢…あっ､ごめんなさい､そんな､つもりじゃ｣

やってしまった｡

感情的な女は私も嫌いだし､世の中の男性もそれは嫌いな部類だろう｡霊幻さんも絶対そうだ｡そうに決まっている｡

｢霊幻さんが浮気とかそんな､ないに決まってるのに｡あはは､馬鹿ですね私｡霊幻さんかっこいいからって焦っちゃってたみたい｡ごめんなさい｣

｢……嘘だろ｣

｢､え｣

｢ごめんな｣

なんで謝るの｡

なんかもう霊幻さんがわかんなくなってきた｡
最初からわかってなんかいないのかもしれないけど｡

｢俺最近お前に構ってやれなくて｣
｢なんか私がかまちょみたい｣

私がそう言って笑うと､霊幻さんはさらに表情を曇らせた｡

｢お待たせしました｡ペスカトーレです｣

今のタイミングでやってきたバイトJK｡やっぱJKってノリと勢いで何でもできるからいいね｡前の私みたい｡
でも､前の私は途中で線路からずれてしまったけれど｡

どちらもバイトJKに返事をしなかったため､私の方にペスカトーレが運ばれてきてしまった｡

私のスパゲティは幸いまだ運ばれてきていない｡

｢…霊幻さん｣

私がペスカトーレを霊幻さんの方にずらす｡
霊幻さんは無言で器を受け取った｡どうやらまだ食べないでいるつもりだ｡

｢お待たせしました｡魚介のクリームスパゲティです｣
｢…はい｣

バイトJKはさっき渡す相手を間違えたことに気付きもせず帰って行った｡厨房の方で｢店長～あがりで～す｣と能天気そうな声が聞こえた｡

｢いただきます｣
｢おう｣

味がしない｡美味しいはずなのに､このお店｡

｢自分の分は払いますから｡今日もちゃんと帰ります｣
｢いや､払わなくていい｣

霊幻さんは自分の誤りに気付いたのだろうか｡
この人はどこか､恋愛に関して不器用なところがあるのだ｡

私達は無言で麺を噛み潰していた｡