魅 た ら 負 け【マフィア松】 7

彼女は逃げ出した ページ23

「っ…！」



男が言い終わった瞬間、彼女は持っていた缶コーヒーの中身を前の2人の顔にぶっかけた。

2人が怯んだスキを見て彼女は駆け出すと、階段を駆け上がって駅の出口へと向かった。



「今の今まで探り入れて、ようやく手に入れたチャンスだ！！

捕まえろっ！！」



当然後ろの3人も遅れて彼女を追い掛け、彼女はｷﾞﾘﾘと歯を食いしばる。


男達の口調から、どうも前から自分の動向を伺っていたようだ。
きっと今までは兄弟達が誰かしら自分のそばにいたので手が出せなかったんだろう。


だが今、自分は絶賛松野兄弟から逃亡中の身だ。
それ故自分を助けてくれる存在はいない。

だからこそ、今目の前に現れたのだろう。



「(どうして考えなかったんだろ…自分の�狷猫瓩録佑魘犬錣擦襪鵑世辰�)」



彼女は後悔した。
今まで浮かれていた自分に。

どうして考えなかったんだろう。
自分を付け狙う人間がいる可能性を。



思えばAは今まで、誰かの傍に守られながら生きていた。


兄弟の所にいる時も。

梅田の所にいる時も。


自分の傍には必ず誰かがいて、Aの世話をしてくれていたんだ。

そんな状態ではいくら�狷猫瓩婆ノ擦気譴茲Δ�
他が近付けるワケがない。



だが今の彼女は1人。

そう、生まれて初めての1人だ。


誰も彼女を守ってくれない。

誰も手助けをしてくれない。


そんな無防備な彼女は格好の餌食だろう。

ましてや裏社会で噂されている人間だと知れば、よからぬ事を企てる奴だって出て来る。


自分達の利益の為に、捕らえようとする輩だって出て来る。



じわり、彼女の額から脂汗が流れる。


これで捕まってしまったら、自分達はどうなるんだろう？
ここで捕まったら、次に逃げ出せるチャンスはいつ？


きっと松野ファミリーのように優遇されるはずもない。


もしかしたら鎖で繋がれて生活しなくてはいけないのかもしれない。

もしかしたら1日中見張られながら過ごさなければならないのかもしれない。

もしかしたら監獄のように何処かに閉じ込められてしまうのかもしれない。



イヤだ、イヤだ。イヤだイヤだイヤだ。



繋がれるのはもう沢山。

見張られるのももうイヤ。

閉じ込められるくらいなら、いっそ死んだ方がマシだ。



ようやく駅を飛び出して、外へ出ると
彼女は左右を見渡し何処へ逃げようか迷って、人通りの多い方へと走り出した。


すぐ後ろでは追っ手が迫る。

彼女は人混みを避けながら、快晴の青い空に祈りを捧げた。

彼女は限界だった→←彼女ははぐらかした

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