彼女はわかりたくなかった ページ19
「(……何よ、今更。あんなヤツの顔が浮かぶなんて)」
彼女は視線を落として微かに眉を顰めると、被っていたつば付き帽のつばを摘んで項垂れる。
さっきまで一緒にいた、青い彼。
兄弟の中では2番目であるはずなのに
いつも下の4人や1番上の長男にいじられてばかりで、情けない男。
でもあの中では1番、彼は優しく紳士的だった。
嫌だと思う事は絶対にしないし、1番に自分(正確にはA)を気遣い、弱い所は決して見せてくれない強がりさん。
表で普通に生活していても。
猯↓瓩了纏をしていても。
よく言えば表裏が無く
悪く言えば甘い男だった。
だが彼女の経験上、そう言った人種はなかなかにいない。
人間は誰しも本性を持ち、ソレをひた隠して過ごしている。
猯↓瓩寮こΔ脇辰砲修Δい人達で溢れ返っているのだ。
だからだろうか。
彼の事を考えると調子が狂ってしまうのは。
「(ああ、もう。やめやめ。あんなヤツの事考えるのは)」
浮かんでは消えて、また浮かぶ青い彼の顔。
彼女は首を横に振ってその顔を振り払うと、再び窓の外を流れる景色を眺めた。
電車は丁度トンネルを抜けて、建物ひしめく街中を走っていた。
空は雲一つない快晴だ。
太陽が光り輝き、青い空が一面に広がっている。
彼女は無意識の内に空を見上げて、ふとまた青い彼の事を思い浮かべる。
少しやり過ぎちゃっただろうか。
怒ったりしていないだろうか。
ちゃんと兄弟達はカラ松も回収してくれるだろうか。
様々な心配事も浮かんだ後、彼女はまた我に返ったかのように首を横に振った。
「(……なんなのよ)」
電車は駅に着き、車掌のアナウンスと共に扉が開かれた。
元々人はあまり乗っていなかったのだが、その駅で何人か降りたので更に数が減り、彼女の乗っていた車両はポツポツと人が乗っている程度だった。
もう少し先まで行こうか、とも考えていたが
窓の向こうに見える青空を見ていると、またヤツの顔が思い浮かびそうで。
彼女は扉が閉まる直前になって踵を返すと、車両から出て足早に駅の改札へと向かって行った。
「(こんな、こんな気持ち。何なの、何なのよコレ。気持ち悪い)」
改札に向かうまでの間、彼女は微かに眉を顰めながら胸を抑える。
彼女もまたわからなかった。
……いや、わかりたくなかった。
普段は自分が奮っていた狷猫瓩
身を持って体感している事に。
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柊(プロフ) - 朝から暇潰しにと軽い気持ちで読み進めてたんですが、書き方や設定の作り込みにすごく惹き込まれて一気に最終章まで読み進めてしまいました……特に主人公対兄松それぞれのやり取りにはすごく圧巻したというか、兎にも角にも笑いあり感動ありですごく面白かったです;; (2022年4月30日 0時) (レス) @page50 id: a82882ac10 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - トマトの王様さん» コメントありがとうございます!終わってしまいました…!楽しんで頂けたようで良かったです^^ここまで読んで下さりありがとうございました〜!! (2019年8月1日 1時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
トマトの王様 - うわあぁぁぁぁぁ!遂に終わってしまった…!( ;∀;)読んでてとても楽しかったです。お疲れ様でした! (2019年7月31日 14時) (レス) id: 5390b171c6 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - arumo?さん» コメントありがとうございます!お疲れ様ですっ( ˇωˇ ) (2018年10月10日 0時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
arumo?(プロフ) - お疲れ様です! (2018年9月29日 11時) (レス) id: ee4365cb85 (このIDを非表示/違反報告)
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