ト シ ノ サ 【不動明王】Part14

演技派なのです ページ15

「……あの、写真の事なのですが」



きちんと口に入れた物を咀嚼して、飲み込んで。
私は再び口を開くと、途端に葵さん達からの期待の眼差しが向けられた。

そんな目で見られてしまうと、罪悪感が湧き上がる。
つい目をそらしそうになってしまうが、なるべく皆さんの目を見ないよう視線だけズラして、私は続けた。



「……その、誰にも言わないって、約束してくれますか？」

「「…！！」」

「うん！約束する！」

「……実は、この封筒に入っているのは帝国学園サッカー部の方の写真なのです」



言い終わるが早いか、天馬くんと西園くんからは声の揃った「やっぱり！」と。
葵さんからは「誰々？！」と。
あとの御三方は随分と静かでした。


中身の写真が折れないように、それっぽく封筒を胸に抱え、私は視線をそっと下に落とす。

コレは照れている演技なのです。
私、こう見えても演技は得意なので。


……誰です、今鼻で笑った人は？
表情が動かなくても身振り手振りで表現は出来るんですよ。



「誰かは流石に教えられません。
でも帝国学園のサッカー部員である事は間違いありませんね」

「……一応聞くけど、なんで帝国学園の人の写真貰ったの？」

「それは……別に何だっていいじゃないですか」

「そこははぐらかすんだ〜？へぇ〜？」

「とにかく、この事は絶対誰にも言わないで下さいね。私達だけの秘密なのです」



あんまり話が広がる前に私は適当に終わりにして
ようやくお弁当を食べ進める。

これで不動さんとの仲を怪しむ人はいなくなるでしょう。
万が一噂が広がらなかったらソレはソレで。
とにかくイチャイチャし放題なのです。


…あ、一応言っておきますけれど、イチャイチャと言っても部活中はお話するだけですからね。

本当はギューってしたいし、ちゅってしたいし、手とかも繋ぎたい所ですけれど。ソレはデートだけなのです。


………あ、デートいつにしましょう。
今度は何処に行きましょうか？

不動さんに相談しなくては。



「……あれ？影山くん？」

「あ、あはは……今日もご飯が美味しいなぁ……」

「影山くん、お箸床に落ちていますが？」

「……………」

「……元気出せ、狩屋」

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