△リボンが360こ▽ ページ20
「………真名部、」
ふと、Aは真名部に向き直る。
そうして1度、真名部と繋いでいた手を離した。
離したのは一瞬だけだったのに、真名部は酷く不安になった。
再び両手で手を握り、Aはぎゅっと柔らかく握る。
真名部も震える手で握り返すと、Aは嬉しそうな微笑みを見せた。
そうして、まるで小さな子に読み聞かせでもするように、Aは言葉を続けた。
「あのね、私ね、警察の所に行こうと思うんだ」
「……………………………………えっ」
優しい、優しい声で、彼女が口にしたのは
とても、とても、残酷な現実。
真名部の思考が凍りつき、頭が真っ白になる。
握る手に力も入らなくなり、真名部は瞬きも忘れてAを見遣る。
Aは続けた。
「私ね、いっぱい…いっぱい悪い事しちゃったから。
だからね、警察の所に行って、ちゃんと叱って貰おうと思うの！」
「……………………」
「ホントはね、本当に嫌だよ？だって警察はキライだもん。ママの次にキライだもん。
でもね、これ以上ね、私と一緒にいても、真名部も……その、楽しくないと思うんだ。だって最近の真名部、怖い顔ばっかりだもん。
だからね、真名部、」
嫌だ。聞きたくない。
耳を塞ぎたかった。
でも彼女に手を握られていたから、出来なかった。
Aは少しだけ悲しそうに目を伏せる。
やめて。止めて。それ以上は。
そう願っても、その望みが真名部の口から出る事はなかった。
「＿＿＿＿暫く、バイバイしなきゃだね」
予想通りの彼女の言葉に、真名部は言葉が出なかった。
……どうして、笑顔でそんな事が言えるんだろう？
彼女はわかっているのだろうか。
彼女自身が犯した罪の重さを。
彼女はわかっているのだろうか。
自分のこれからの結末を。
8人の人間を殺した殺人鬼に、どんな罰が下るのか。
『暫く』なんかじゃない。
これはきっと『永遠』の別れ。
この手を離してしまえば、もう彼女とは二度と会えなくなる。彼女はきっと、もう二度と外に出られない。
最悪、死刑だ。
嫌だ。嫌だ。
頭ではそう考える。心の底から嫌だった。
いつしか見た夢の光景と、目の前の彼女の姿が重なる。
真名部の思考が停止して、はくはくと口を開け閉めするだけ。「ぃ…ゃ……ぁ……」と声が漏れるだけ。
最後に彼女は、寂しそうに笑った。
「今まで、ありがとう。
…………本当に、ごめんね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
＊IJu＊(プロフ) - キジバトさん» 初めまして！コメントありがとうございます^^楽しんで頂けているようで良かったですー！作者無計画なんでこの章で終わるかはわかりませんが、でも終わりが近付いているのは確かなので、是非最後まで楽しんで頂けたら…！更新頑張ります！ (2021年12月24日 0時) (
レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
キジバト - 初めまして！この作品めちゃめちゃ大好きです！文章もすっごい神だし、真名部の心の動きとかがすごく丁寧に書かれててすごく面白いです！クライマックスなのはちょっと寂しいですが，そのまま最後まで頑張ってください…！応援してます！ (2021年12月23日 1時) (レス) @page1 id: 7552df8542 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
