リ ボ ン の 檻【真名部陣一郎】

△リボンが11こ▽ ページ14

「むっ…む、無理だったらいいんです！
わざわざ連絡するような事でもありませんし…！

ち、ちょっと個人的に両親が気になっただけなので……」



彼女の視線に耐えられなくなった真名部は早くも根を上げると、そう付け足して苦笑いを浮かべた。

対してAは目を丸く見張ったまま、暫く真名部をじっと見つめていたが、やがて何やら考えるかのようにこてんこてんと首を左右に傾げる。


そうして彼女はようやく笑みを取り戻すと
ﾆｺﾘと笑いながら口を開いた。



「…いいよ！」

「え、へっ…？」



予想外の返答に、真名部は思わず間抜けな声をあげる。

Aはおもむろに、閉ざされた部屋の扉を指差すと
笑顔を崩さずに続けた。



「向こうにお電話あるから、使ってもいいよ！」

「い……いいん、ですか？」

「うん！パパとママは心配させちゃいけないもんね！」



「こっちこっち！」と彼女は立ち上がると、慣れた様子でﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝと足場のない床を兎のように飛び回り
部屋の扉の前に立って真名部に手招きをした。

真名部は終始拍子抜けな顔をしながらも、床に散乱した物を踏まないようにしながら、彼女の元へ。



「(何か企んでいるのでしょうか……)」



内心、裏があるのではと考えていた真名部だが
何処か心の隅で、期待している自分もいた。



−−−



彼女に案内されて部屋を出ると、そこは廊下だった。
何の変哲もない、フローリングの廊下。

少し進んで向かい側には扉が1つ、更に向こう側に上へと通じる階段が1つ。
どうやらこの建物は2階立て以上である事には間違いないらしい。


更にその向こう側には玄関があり、そこには外に通じてるであろう扉が1つ。

真名部は今すぐその扉に駆け寄りたい衝動に駆られたが、正面には無邪気に笑う彼女の姿があり、自分の身体能力を考えるに彼女を振り切れる自信は五分五分だった。


だから彼は、此処が玄関であると頭の中のマップに叩き込んで、ひとまずは大人しくしている事にした。



「はい！電話！これ使って！」



そんな事を真名部が考えているだろうとは露知らず
Aは笑いながら玄関前にある電話を指し示すと何処か得意気にまた笑う。


玄関前、階段向かいには確かに固定電話が1つ。
一般的な固定電話で、元は白だったのだろうが、少し色は黄ばんでいる。

受話器に触れると埃っぽく、暫く使われていない印象を受けた。

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