【イナイレ】シッカーラプンツェル【不動明王】

◇ラプンツェルの恐怖 ページ6

「っ…？！」



喧嘩を止めようかどうか迷っていたら、よりによってその知らない男の人と目が合った。

私は思わず後退り、その拍子でスライド式の扉から手を離してしまう。


中途半端に開いていた扉はゆっくりと横に動き出し
やがてﾄﾝﾄﾝと鈍い音を立てながら、部屋の扉は閉められた。



『おっやぁ？もしかしてお仲間さんが会いに来てくれたのかなぁ〜？』



扉が閉まった直後に向こうから、わざとらしい知らない声が響いた。

ソレは私の耳にも届き、私の脳内に危険を示すサイレンが鳴り響く。



ダメ、ダメ、ダメ。此処にいちゃ、ダメ。

頭ではそう思っていても、足は震えて動かない。
その間にも向こうでは争う声が聞こえて、扉へと近付いて来ているような、そんな気がした。


このままじゃ、見つかっちゃう。

あの男の人、絶対見つかっちゃダメな人だ。



「っ…」



幻聴か、現実か。
ｼﾞﾘｼﾞﾘとこちらに近付く足音が聞こえる。

私は少しずつ後退りながら扉を見つめていたが
扉のガラスに映りこんだ人影を見て、遂に私は逃げるように踵を返すと、自室へと全力疾走で引き返した。


とは言っても隣だからすぐに着いたと思う。
扉を開ける時、焦り過ぎてもたついちゃったけど。

でも此処で逃げて来るまでの時間がいつもよりすごく長く感じた。
走った距離だって大した事ないのに、額から汗が止まらないし、呼吸だって苦しい。


私は机の上に置いてある吸引薬を手に取って、息を深く吐いてから薬を吸い込んだ。

そうして何度か呼吸を繰り返すとさっきまで苦しかったのが少しずつ、少しずつ楽になっていった。


でもまだ心臓がﾄﾞｷﾄﾞｷしてる。
体も微かに震えていて、私は強く布団を握り締める。



…あの人は、誰なんだろう？

サクマとゲンダの何なんだろう？


でも聞きに行く勇気も無ければ、隣の部屋に向かう勇気さえも無い。



……今日は2人の部屋に行かないでおこう。



あの怖い人がずっといるってワケではないとは思う。
でもいつまでいるのかわからない以上、怖くて部屋から出られない。


私は布団に頭まで潜り込むと、そっと目を閉じる。

寝れる気は無いけれど、早く時間が進んで欲しかった。
あの怖い人が早く何処かに行ってほしかった。



でも次の日には、怖い人どころか

サクマとゲンダさえも病室からいなくなっちゃうだなんて、思いもしなかった。

◇ラプンツェルの憂鬱→←◇ラプンツェルの不注意

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す