【イナイレ】シッカーラプンツェル【不動明王】

◇ラプンツェルの遭遇 ページ31

「あ……あの、あのあの……えぇっと……」



でも今の自分の状況を考えると、この人に尋ねるしかないと思った。
だからフドウの居場所を教えてもらおうと思ったの。

だけど、その人に見下ろされているからか口が上手く動かなくって。

私はなかなか先が言えずもごもごしていると
不意にその人は口を開いた。



「………お前が黒井か」



…低く、背中がｿﾞﾜﾘとするような声だった。


しかも私の名前を知られていて、私は困惑と恐怖から声も出せず、ただただ首を縦に動かして頷いた。

すると今度は私をじっと見つめだし、私は思わず背筋を正す。


蛇に睨まれているような感覚だ……
とぐろを巻いて、今にも襲いかかって来そう。

動いたら死ぬ。食べられて死ぬ。
そんな風に思ってしまう程のオーラを持ち合わせている。


勿論この人は人間だろうから、私なんか食べないと思うけれど……



…………食べない、よね？



「…この先を真っ直ぐ進んだ奥の部屋に向かえ」

「へっ……？」




暫くの間、品定めでもするかのように見られて、私は体を強ばらせながらもただ黙っていると
ふとその人はそう言って、私のすぐ横を通り過ぎた。

私は御礼も言えずﾊﾟﾁﾊﾟﾁと瞬きを繰り返しながら、その人の背中を眺め、見えなくなった途端に感じる疲労感。



……怖かった。

本当にあの人は怖かった。


あんなに怖い人に会ったのは初めてだ。
顔も確かに怖いけど、それだけじゃない。

なんだか存在自体が……怖い。狂気に満ちている。そんな感じ。


あの人は…誰なんだろう？

フドウに勧誘された人…って感じじゃ、ないよね。
本当にこの潜水艦内には怖い人しかいないんだろうか。


まだ離れて1日も経ってないのに、早くも私が入院していた病院が恋しい。



「…とりあえず、あの人が言ってた所に行ってみよう…」



さっきみたいな人がまだいると思うと、思わず足が竦んだ。

でも、折角教えたもらったんだ。行かないと。
もしかしたら親切な人だったかもしれないし。



まだ少し怖いけど、大丈夫。

何かあったらフドウを呼ぼう。


そう自分に言い聞かせながら、私はあの人が言っていた奥の部屋へと駆け足で向かった。

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