【へきせん】鳥はこれで結構なり【CS/派生】 (ページ3)

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【続き】

　日本初飛行の公式記録を持つアンリ・ファルマン機を参考に設計され、徳川大尉が設計主任を担当した経緯から新聞紙では「徳川式」の文字が踊った。
　しかし徳川大尉本人は「名誉を独占したくはない」と好んでおらずいつも「研究会第一号」と呼んでいたと言うが、メディアがあまりにも騒ぐので結局のところ世間は「徳川式一号機」で通っていたようである。

　翼布はなんと国産絹製。骨組みは主にヒノキが使用されているのみならず、発動機とプロペラ以外は全て国産という豪華さ。
　かかった費用は3,084円。当時の大卒初任給が30円(今は20万)。ここから当時の1円=約6600円と仮定して現代価値に換算すると20,354,400円である。

　この「会式一号機」はあくまで国産軍用機実用化への挑戦機すなわち実験機であり、公に出る機会は少なく、すぐ後に生まれた二号機・三号機に引導を渡し、暫く所沢飛行場で空中偵察や操縦練習の教育用に用いられたのち、所沢陸軍飛行学校内に併設された参考館に保管される。時々あきつ飛行場にも訪れていた様子。

　終戦時には米軍に解体された状態で「戦争資料」として接収されていたが、1960年のとある記念行事の際に日本に返還される事になり、先に到着していたアンリ・ファルマン機を追うようにアメリカの貨物輸送機に乗ってあきつ飛行場へやってきた。

　記念行事に備えあきつ飛行場近くの研究所で改修工事を行っていたのだが、予想以上にレストアに時間を要したために結果的に記念行事には間に合わず、徳川大尉やアンリ・ファルマン機と再会することも叶わなかった。
　それを不憫に思った当時の空港長が「遥々帰ってきたのだから、日本の空をもう一度見せてやりたい」と思い立ち、研究所からのクレームを押して頼み込み、あきつ飛行場に展示されている飛行機による航空祭を開催。驚くべきことに会式一号機も老体に鞭打ち空へ羽ばたくことになる。

　しかし当時の軍人達でさえ操縦に四苦八苦した飛行機の老体を、全く新しい仕様に慣れたパイロットが簡単に操縦できるはずもなく、関係者・職員に見守られて行われたテストフライトで、滑走路を離陸した数秒後に横風を受けてバランスを崩してしまった。

　右翼を擦りつつ片脚が地に付きあわや転覆＿＿と思った次の瞬間、滑走路に現れたのは投げ出されたパイロットと唸りながら転がっていく小さな爺さんだったという。