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10話 ページ10

禰豆子が蹴飛ばすと、ボンという破裂するような音が鳴り、同時に何かが遠くに吹っ飛んでいく。

それを目で追うと、男の首がごろりと地面に転がった。

蹴鞠のように蹴飛ばしたように見えたが、鬼となった禰豆子の一撃は人間のそれと比にならないようで。俺は固唾をのんだ。

あの可憐な禰豆子が、大股を開いて蹴り上げた挙句、男の頭をふっとばしてしまったのだからこれは俺の中で大事件だった。

しかしこのまま突っ立っているわけにはいかず、二人に駆け寄ろうとするとゆらりと胴体が動くのが見え、炭治郎に知らせようと口を開こうとしたが、更に禰豆子がそれを蹴り飛ばした。

彼に駆け寄り立ち上がらせようとしても、彼はわなわなと口を動かせるばかりで、腰が抜けているのか中々立ち上がらない。

「ね、禰豆子が…」

炭治郎が何かを言おうとするのを遮るように、唸るような声が響いた。

「てめぇえらぁあ!!やっぱり鬼が紛れてたのかよぉお!!妙な気配させやがってえぇえ!なんで鬼と人間がつるんでるんだぁああ!」

声の方へ向くと、先ほど禰豆子に鞠のようにされた男が、額に青筋を立てながらこちらを睨みつけている。

物理的におかしい。首がもげたら普通死んじゃうもんだろう。
やっぱりこいつは人間じゃない、鬼だ。

恐怖に気が遠のきそうなのをぐっとこらえ、足を踏ん張り炭治郎をひっぱりあげようとした時だった。

胴体がむくりと起き上がり、こちらへ突進してくる。

俺は足を出して奴の足を引っかけようとしたが簡単によけられてしまい、その結果そいつは禰豆子につかみかかる。

「やめろ!!」

今まで座り込んでいた炭治郎が、斧を手に立ち上がりそれを振り上げようとした時だった。何か黒い影がこちらに飛び掛かってくるのが見え、彼は斧の矛先をそちらに向ける。俺はそれに当たらないよう体を捻るが僅かに羽織をかすった。

飛んできたものは、この世のものとは到底思えない、頭に両手の生えた先ほどの男だった。

もう何が何だかわからない。ありなのか?こんなのありなのか?

鋭い牙が生えそろった口を大きく開ける男に、炭治郎は斧を食わせるが、男は彼の肩を掴み離さない。

俺はばあちゃんから渡された脇差を思い出し、腰からそれを抜き構えたのだった。

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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時

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