47話 ページ47
”私はここから離れるわけにはいかない。罪人をここから出さない事が私に与えられた役目ですから”
門に居た人は鬼が怖くないわけじゃない、自分に与えられた役目を果たそうと留まっていた。
逃げようと思えばいつだって逃げれるのに、もしかしたら心の中で今すぐにも逃げたいと思っていたかもしれない。
だけど、今自分が放棄すれば罪人がこの山から逃げ出し、混乱を招く。
だからあの人はあそこから逃げ出さず、きっと今でもあそこを守っている。
自分の意思で。
俺は、刀を強く握りしめた
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聞いたこともないような音が体の内側から鳴った。
体が生暖かく、水浴びでもしたかのように濡れる。
それを見て鬼は笑った。
「馬鹿じゃないの?!なんで避けないのよ、そんなんじゃあたしの首は斬れないんだから!!」
全身に雷が落ちたかのような激痛が走っていた。
俺の左太もも、右足のふくらはぎ、右腕には槍のように尖った土が貫通していた。
俺も自分自身で決めたんだ。
炭治郎の助けになるって。
それにあそこで門を守っている人がいるのに、ここで負けたらあの人はどうなる。
最悪鬼が下まで降りてきて喰われる。
それだけじゃない、もっと多くの人が喰われてしまう。
こんなところで死ねない
今ここでこの首を刎ねる!!
「ぐ――――ッ!!」
鬼は顔を更にしかめる。
じわじわと首に刃が斬りこんでいく。
「あ゛アァ――――ッ!!ふざけるなァ!!さっさとくたばれェ!!埋もれろ埋もれろオォ――――ッ!!!」
――― 鬼血術・罪咎葬送 ――――
足元がぐにゃりと沈む。
その瞬間、体から槍が抜け、体に自由が戻った。
俺は力を振り絞る。
もっと、俺の覚えが良ければ。
炭治郎のように、型を全部覚えられていたら。
もっと今は違ったかもしれない。
「ああぁ―――――ッ!!!」
俺は自分を叱咤するように咆哮する。
体がどんどん沈んでいく。
鬼の首はあと半分。
体中が痛い。
血で刀を握る手が滑る。
あと半分なのに、あと半分で終わるのに。
「心を落ち着かせろ」
……え?
突然自分の体に衝撃が伝わってくる。
そして体が地面から引き抜かれる感覚がした。
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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時