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44話 ページ44

その子は痛くもかゆくもないと言ったような様子で、隊員からの刀をその首に受けている。

鬼だ…。

何度も振り下ろされる刀。

しかし一筋すら首には傷がつかない。

今まで一太刀あれば分断していたそれがまるで効いていない。

「咎を認めて、楽になってしまえばいいのに」

「罪を償うのはお前らだ!!俺は何一つ悪い事なんかしていない!!両親を返せ!兄弟を返せ―――ッ!?」

女の子が今まで受けていた刃を素手で受け止める。

俺は慌てて飛び出し刀を抜く。

「嗚呼…今日は罪が増えそう」

にたりと少女が笑ったのだった。

水の呼吸… 壱ノ型 水面切り

少女の首めがけて刀を振り切る。


少女の首は確実に捉えた。

しかし刃は少女の首を切り落とさない。

刃は皮膚に到達しているはずなのに、そこ首には傷一つついていないのだ。

もっと集中しろ、もっと!!

もっとだ!!

歯を食いしばり力を込める。

すると少女の顔が一瞬歪んだのが目の端に見えた。


――― 鬼血術・罪咎葬送 ――――(ざいきゅうそうそう)


ぐらりと視界が傾く。

足元がぐにゃりと、沼にでも入っているかのように沈む。

俺は咄嗟に飛びのく。

「あぁ!!ああ――――ッ!!」

叫び声が聞こえ目をやると、先ほどまで少女に向かっていた鬼殺隊員が
黒い沼のような場所にずぶりと腰まで飲み込まれている。

しかしこの瞬間も隊員がもがけばもがくほど、体は沈んでいく。

こんなところに今まで沼なんてなかったのに、どういうことだ。

これが異能の鬼…?

初めて見る現象に息をのむ。

「助けて…ッ!助けてくれ!!」

こちらに手を伸ばす姿を見て、我に返る。

あの手を掴まなければ。

必死に駆け寄り手を伸ばそうとした時だった。

また足元がぬかるみ、足をからめとってくる。

もう少し、もう少しで手が届く。

「空しい、空しい…」

笑いを含んだ声で少女は言う。

やっと手が届く、そう思った俺の手が空ぶった。

今まで胸まで出ていた隊員が、吸い込まれるように沼へと消える。

条件反射で沼から飛びのくと、そこは何事もなかったかのように地面に戻った。

「嗚呼、残念遅かったみたい、あと一歩だったね、ご馳走様」

隊員が消えていった事が信じられず、俺は茫然とその場所を見つめる。

「ねえ?」

背後から猫なで声が聞こえて、振り返る。

すると少女がニタニタ笑っていた。

いつの間に後ろに。

全身からじっとりとした嫌な汗が噴き出した。

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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時

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