30話 ページ30
Aside
とうとう明後日、最終選別を受けるため、藤襲山へと入山する。
藤襲山はここから遠い場所にあるため、鱗滝さんに言われて明日の早朝にはこの家を出る。
だけど、俺はまだ炭治郎に、最終選別へ行くと伝えていなかった。
鱗滝さんにも自分から言うといったので、多分何も言っていない。
朝からずっと、炭治郎に言おうとしているのだが、彼も俺も鍛錬があるため、夜になる今の今まで一切会話をすることなく、とうとう寝る時間にまでなってしまった。
彼は今、うとうとしながら日記を書いていた。
もう話せるのは今しかないと思い、彼に近づくが全く気付いていない。
「炭治郎」
「え…?あ、A……、どうしたんだ?」
振り向いた彼の目は半開きで、今にでも寝てしまいそうだ。
「俺、明日最終選別に行く」
そういうと、半開きになっていた目が、徐々に見開かれて行き
「な……え?!ど、どういうことだ?!どうして!!」
そう言いながら、突然立ち上がるものだから、彼は態勢を崩して俺のほうに倒れこんでくる。
そんな彼を受け身術で蹴飛ばしそうになるが、ぐっとこらえると二人そろって床に倒れ込んだ。
「ご、ごめん!」
そう言いながら体を起こした炭治郎だったが、こちらをじっと見つめるとがばっと抱き着いてくる。
「いやだ、行くな!鱗滝さんは?!鱗滝さんは何て言ってるんだ!」
彼の腕に更に力がこもる。
そんなの俺だって同じ気持ちだ。
今だって、炭治郎に最終選別だって受けてほしくないし、鬼殺隊にだって入ってほしくない。
けど、お前が行くなら俺も行く。そう決めたんだ。
「せめて一緒に行こう!俺も鱗滝さんにお願いして明日…」
そういう彼の頭を撫でて抱き寄せる。
一緒に行った方が、炭治郎を守れるかもしれないが、俺が足手まといになる可能性も捨てきれない。
もしも俺が受かったら、一日でも早く禰豆子を人間に戻すすべを見つけれたら、彼が選別を受けずに済むかもしれない。
そんな都合のいいことはないだろうが、希望があるなら早い方がいい。
せっかく鱗滝さんに許可をもらえたんだから。
「今日は、一緒の布団で寝てもいいか?」
そう尋ねると、彼は俺の胸に縋り付いてきたのだった。
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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時