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19話 ページ19

炭治郎side

傷口がズキズキと痛む。

けど休むわけにはいかない。

禰豆子を人間に戻したい。

家族を殺した鬼を討ち果たしたい。

俺は昨日、修行中に足を滑らせて、罠にかかり、降ってきた刃物を避けきることができず、左肩、そして左の脚に傷を負ってしまった。

どうやって家まで戻ったのか覚えていない。

気が付いたら、Aに手を握られながら眠っていた。

俺はAの作った飯を食べ、修行に行くため家を出ようとすると彼に厳しく止められた。

Aからは息が詰まりそうなほどの、惧(おそ)れのにおいがする。

彼は花屋の跡取りだ。いつもとてもいい香りをさせていて、身なりにも気を使い、髪は腰まで伸ばして綺麗にまとめている。

初めて会った時、なんて愛らしい子なのだろうと暫く見入っていたのを、今でも鮮明に思い出せる。

ここに来てもそれは変わらなかった。

けど来たことで変わったこともあった。

Aからはいつも悲しいにおいがするようになったんだ。

だから、尚更鍛錬に明け暮れていた。

禰豆子を人間に戻すために、家族を殺した鬼を討つために、そして自分を思ってくれる人を守るために。

でもまだ俺は弱いから、Aに心配ばかりかけてしまう。

早く強くなりたい。

そのためには一日でも鍛錬は欠かすことはできない。

鱗滝さんに許可を得て、俺は山を登った。

もう昨日のような失敗はしない。

絶対にできない。

俺を必死に止めてくれていたAの姿を思い出す。

髪を振り乱し、着物は着崩れを起こし、目の下には隈ができていた。


ごめん、A。

俺は単純だから、こうして毎日繰り返すことでしか身につかない気がするんだ。

一日でも休んだら、積み上げてきたものが一瞬でなくなってしまいそうで。



必ず強くなる、辛くても苦しくても挫けそうになっても、絶対に、強くなって見せる。

いつもの開始地点までつくと、数回深呼吸を繰り返し、山を下り始めた。

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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時

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