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「……ぅわ、最悪、」
傘の持ってない俺は、アスファルトに降り注ぐ雨を見てそう呟いた。
今日は、とことんツイてない。
なんて、ぼぅっ、とする頭で考える。
社会人になって早3年目の俺には、有難い事に、後輩も出来て。
後輩に頼られる分、俺も頑張んなきゃって意気込んでたんだけど。
一年に一回有るか無いか位の大事なプレゼンの日に限って、体調を崩してしまった俺。
誰にも体調不良だと告げずに何とかプレゼンは終えられたんだけれど、直属の後輩である元太には体調が悪いことがバレて、終わった後に凄く心配された。
元太にもの凄く迷惑を掛けたのは、これでも自覚してるつもり。
「…はぁ、」
仕方ない。このまま雨に濡れて帰るか。
そう歩き出そうとした時。
「ちょっと、宮近さん、？！」
慌てたような声が後ろから聞こえてきて。
「…げんた、」
「…これ、使ってください、」
そう言って渡されたのは、ビニール傘。
「…ぇ、ちょっ、悪いって、」
そう言って押し返そうとしたのに、グッと、半ば強引に傘を渡されて受け取ってしまった。
「…宮近さん。それ差して帰んなかったらゆるしませんからね？俺は、松倉さんの傘に入れてもらうんで、安心してください。」
じゃあ、お大事に！
なんて、俺の言葉も待つことなく、建物の中に入っていってしまった彼を目で見送った。
「…カッコ悪、」
ダサい。ダサすぎる俺。
せめて後輩の前ではカッコ良い先輩でいたかったなぁ、なんて、思いながら、降り注ぐ雨に向かって傘を差した。
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作者名：紗彩 | 作成日時：2022年9月9日 18時
