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「木兎くん！一緒に帰ろ？」
「おー！帰ろーぜ！」
一見半年前と同じ笑顔。
でもそこには心からの笑みはない。
あの子は木兎くんの幼なじみだったっけ…
あんまり知らないけど多分そうだった気がする。
いまになって薄々気づく。
いや気づかされる。
木兎くんのあの見ず知らずの他人まで元気に出来る笑顔は────
あの子が居ないと生まれないんだと。
あの子のためだけに彼は笑っていたんだと。
ほら見てさっきまで笑顔だった君は今照らされた窓側の机を見て哀愁の表情を浮かべている。
その窓側の席…あの子の席だよね。
私には何も出来ない。
あんなに救ってもらったのに
「駅前に木兎くんの好きな焼肉屋さんの子会社が経営してる唐揚げ屋さん出来てるの知ってる？一緒に行かない？」
「いいな〜！行こーぜ！」
でもいつかきっと木兎くんも心から笑える日が来るよね。
だから私もその日まで笑顔の練習をしておくんだ。
木兎くんの輝かしい笑顔の隣に立てるように。
──染み付いた仮面は 剥がすことが出来ない──
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作者名：雪ｾﾂ | 作成日時：2020年11月23日 2時
