17 ページ17
「転校生とAの意見を参考にして、俺たち『Trickstar』が『S1』で披露する曲目は固まった。全六曲、そのうち各一曲ずつそれぞれがメインを張ることになった。開幕直後に演る最初の曲は、安定した持ち歌で、全員に見せ場がある。そこから、もうひとつの持ち歌と、軽音部から提供された新譜が三種……。計四つの曲目は、俺たちが一人一曲ずつメインを担当する。順番はスバル→北斗→俺→真。まだ技術が足りない真は俺たち『Trickstar』の持ち歌を担当して、おまけに失敗しても最後の曲……全員に見せ場のある新曲で、挽回できるはずだ。甘やかしてるっつうか、真に気を遣ってる感じだな。真もそれは諒解してる、自分の実力不足も知ってる。そして、だからこそ『絶対に失敗できない』って思いつめてる」
実力不足……でも、お兄ちゃんの用意した特訓はちゃんとやり遂げた
才能あると思うけど……
「ここまで気を遣われて、それでも失敗するようならお荷物だ。自分は『Trickstar』に必要ない、足を引っぱるだけだ……そういうふうに、考えちまう。あいつはいちど挫折したことがあるから、自己評価が低い。真には資質がある、強力な武器もある。あいつも『Trickstar』に必要だ。だが本人がいちばん、自分自身を信用してない。難儀なやつだよ。でもだからこそ、『S1』では勝たなくちゃいけない。勝利だけが、自信をつくる。真に必要なのは、それだ。勝つまでは地獄だろう、見てられないよ。俺たちが、注意して支えてやんないとな。あいつは不安定で未熟だけど、才能がある。臆病になって、日陰にいるべきじゃない。もっと表舞台で輝くべきだ、俺はそう思う。おまえも同じ考えだったら助かるけどな、転校生」
「……うん！」
あ、なんか考えてるあんず先輩
「……おっと。何か作業中だったのか、転校生。お喋りに付きあわせて悪いな、俺はどうも口が軽くてさ〜？それは、何やってんの？縫製？」
「Trickstarの専用衣装だよ」
「ふぅん。専用衣装までつくってくれてんのか、色々やってくれてんだな〜。助かるよ、でもあと一週間で間にあうの？」
『だから私も手伝ってるのー！』
「悪い悪い。間にあわせるために、こんな遅くまで残って作業してんだよな。ご苦労さん。音楽とかうるさくて集中できないなら、止めるよ？曲は端末にダウンロードしたから、イヤホンでも聞けるしな。まぁ、踊るときには邪魔だけど」
「ううん、大丈夫。むしろ衣更君を見てたほうがイメージ膨らむし」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ポン酢 | 作成日時：2021年2月17日 22時
