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「はあ、はあ……、……くッ……」

 腕に刺さったのは毒矢だった。意識が朦朧とする。

 (……神経毒か。致死量ではないな…………)

 忍び装束の男―山本陣内―は身体を引きずるようにして合戦場を離れた。

 (ただの偵察だったのに、……とんだヘマをしたものだ。私も歳かな……)

 山本は自らを嘲笑った。重い身体が杉の幹にぶつかる。脚は毒が回り動かなくなっていた。

 (……ハハッ、ここで野垂れ死にかな……。いや戦火に焼かれるか……)

 その時、ふと山本の額に影が落ちた。もう山本には警戒することすら出来なかった。

 「大丈夫ですか!? ……神経毒か。しっかりなさい!今、解毒剤を用意しますから」

 現れたのは女だった。長い黒髪が風にふわりと揺れる。山本は遠のく意識の最後に、甘い藤の香りを感じた。



 女―A―は慣れた手付きで男の手当をしていく。喉に流し込んだ薬が効いたのだろうか、男の顔色は随分良くなった。

 「さて……。この忍者、タソガレドキか。送り届けるには少し距離があるし、かといって置いていくわけにもなあ……」

 Aは余った包帯を包みにしまいながら、男を見た。ベテランのようだ。

 (……苦労してそうな顔だなあ)

 別に不憫に思ったわけではない。戦火はもうすぐ後ろに迫ってきていた。

 「見殺しは性に合わないんでねっ」

 Aは男を担ぎ上げ、タソガレドキ城下を目指した。

弐→



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スイちゃんのご友人のご友人 - 更新待機 面白かったです (2023年2月3日 1時) (レス) @page7 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
水無月弥生(プロフ) - 更新楽しみにしています!これからも頑張ってください。 (2020年4月4日 19時) (レス) id: 9fe8b56f99 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十夜 | 作成日時:2020年3月24日 23時

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