ghost.18 ページ18
「……ねぇ、るぅとくん」
「はい?なんでしょう」
「もしまた僕の家に来てAに会っても、
Aには今日親の話をしたこと黙ってて欲しい」
多分、いや絶対、聞いちゃいけない話だった。
話の流れで偶然知ったとはいえ、Aが話したくなさそうだったことを聞いてしまった。
このことを知ったらAはきっと悲しむだろうし、僕もそんなAを見たくない。
何より、「いつか話すから待っててほしい」と言うAのお願いを無視することになってしまう。
僕はそれがどうしても嫌だ。
「ころちゃん…」
「るぅとくん、お願い」
「……分かりました。
僕も少し話しすぎちゃいましたね…」
「ううん、気にしないで。
色々と教えてくれてありがと」
今日聞いた話は、一旦忘れよう。
すべて聞かなかったことにして、いつかAが自分のことを話してくれる日が来るまで、待っていよう。
.
「あ、おかえりなさーい!」
「ただいま」
「お風呂掃除してあるから、
いつでもお風呂入れるよ〜」
「おー、ありがと!」
同居人は今日も変わらず元気。
そして相変わらず雑用を買って出ようとする…。
この前「私は雑用係じゃない!」と怒っていたのに、結局家の仕事を率先してやっている。
しかも笑顔で。嫌な顔ひとつせず。
なんか逆に怖い…。
「楽しかった?」
「楽しかったよ〜。
るぅとくん今日は結構飲んでた」
「ころんくんはあんまり飲んでないの?」
「今日はさすがに自制した」
「この前ベロベロだったもんね〜」
Aはあれからも毎日普通に接してくれている。
それが救いというかなんというか…。
Aが変わらず僕に笑顔を向けてくれるから、僕ももう余計な詮索は止めてAのお願いを叶えることだけを考えようと心に誓った。
スマホをいじっていると、Aから「何食べてきたの?」と訊かれた。
「これ」と言いながら料理の写真を見せると、さすが爆食いフードファイター(勝手にそう呼んでる)なだけあって、Aはすぐに写真に食いついた。
「いいな〜、美味しそう…」
「今度行ってくる?」
「いいの!?」
「いいよ」
僕の顔を見ながらAは「ほへ〜…」という謎の言葉を呟いた。
「何?」
「最初はあんなに嫌がってたのに…」
「慣れだよ、慣れ」
そう、僕はもうこの生活が当たり前になっていた。
この当たり前の生活は、あと何日続けられるんだろう。
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ましゅ☆まろ。紫月まろ。(プロフ) - とっても面白かったです!今更ながらですが、完結おめでとうございます! (7月24日 12時) (レス) @page50 id: df7b4f216a (このIDを非表示/違反報告)
葉琥(プロフ) - 完結おめでとうございます。信じてもらえないかもしれませんが自分も一回幽体離脱したことがあって、その時、夢主ちゃんと同じような体験があってこんな偶然あるんだな〜っと思いながら読んでましたw (2020年9月5日 23時) (レス) id: b0d47f7052 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ - 完結?おめでとうございます!!さとみくんが出てきた所で一人でずっとつぼってましたwお話面白い部分もあり、切ない部分もあり、すごく面白かったです!ありがとうございました! (2020年3月29日 0時) (レス) id: d37bac9867 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - お疲れ様でした!!すごく面白かったです!! (2020年3月28日 17時) (レス) id: e38bb1f61d (このIDを非表示/違反報告)
詩織-siori‐ - すごくおもしろかったです。意外性のある作品だったので先が読めなくてすごく楽しかったです。 (2020年3月28日 15時) (レス) id: 2a36034942 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2020年2月28日 18時