【ONEPIECE】悪運も実力のうち。 (ページ11)

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011 - 外套ページ11

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エースではない。エースよりずっと背が高いし、何より彼はこんな気の利いたことは言えないと思う(失礼)。

「いい子だ」

誘導されるがまま、裾の長い外套の中で手をはみ出さないようにぎゅっと縮こまっていれば、幼子をあやすような柔らかい声が降ってきた。
これは聞くに聞けないのだけれど、上裸に直で上着を羽織るのが最近のトレンドなのだろうか。

「くそ、この先に行ったのか」
「ああ勿体ない、身売りさせようと思ったのに」

ハニカムは居住地から路地裏を抜けてだだっ広い砂浜方面まで向かうと、デービーバックファイトや単なる力比べのために、島のルールさえ通用しない無法地帯へと変わる。相当な命知らずか海賊志願者、希死念慮の念の持ち主でもない限りは、島民だろうと滅多に近寄ることはない。私が"こっち側"にいると知れば、あっさり手を引いていったのがその証拠だ。
海賊と島民がお互いにWin-Winの関係を築いているせいで、海軍は思うように身動きが取れない。ストレス溜めのプールで延々と泳がされてるみたいな息苦しさがつきまとう。

『ありがとうございました』

心の靄を翻訳できたのは、かろうじて自立して歩けるようになった頃だった。
精一杯冷静を装おうと努めていたのに、声はかすかに震えていた。鼻の奥のツンとした痛みと、いまにも溢れ出しそうな涙を堪え、それを悟られないために、汚れた包帯を巻き取っては広げる生産性のない動きを繰り返す。

「問題ない、無事でよかった。それより…助けるためとはいえ、すまなかった」

『え』

『何が』と続けようとして、まさか島民とグルなのでは、と嫌な考えが頭を過ぎる。
再び姿勢を低くとった私に、男は申し訳なさそうに頭を掻いて、私のその嫌な考えを霧散させた。

「断りもなく女性の身体に触れてしまったことを詫びたい。許しを得られるのなら、その怪我を診せてくれないか」

へたり込むような脱力にも似て、空っぽの酒樽に腰が落ち着いた。そのとき初めて男と正面から対峙した。
下顎部に十字の傷と、あまり見ないデザインの眼帯。人は見かけによらないという言葉を体現したような風貌であった。

男は、痛みのひいていない私の左目の、少し下にずれて目袋のほうに指を這わせる。血の滴りはなく、乾いて突っ張ったような感触が後を引いた。その手つきは優しいというよりは、遠慮しているみたいでくすぐったい。

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