残夏の候 ページ7
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美味しそうに彼は綿菓子を口にした。
雲をつまみ食いする天使みたいな行為は、私の行き過ぎたフィルター越しの彼にすぎない。彼は幼児用のキャラクターが描かれた綿菓子の袋を持って、もう片方の手で白い雲に口付けた。
「 ベタベタしますね 」
そうやって張り付いたような、喜劇の笑顔。口角をきっちりと上げた彼の笑顔は、祭りの雰囲気に溶け込まなかった。
8月はやたらと祭りが多い。日々樹渉が直々に私の家を訪問した今朝、祭りに誘われやって来てしまった。行き交う人々は浴衣や甚平に包まれ、ビールの匂いもふんわりと香る。日々樹渉は目立つようで、すれ違う人は私の隣を2度見していく。私はまるで彼の影だと卑下してしまった。
私の銀髪は先日染め直したので色は健在。日々樹渉は私の青髪以来褒めてくれなくなったので少し心残りである。
「 Aさんは何か食べませんか 」
「 … かきごおり 、」
少し間を置いてしまったのは、日々樹渉が私の顔を覗き込むように目線を合わせてきたからだ。跳ねた心臓は音が鼓膜を破りそうなほど身体の中で鳴り響いているけれど、彼には届きやしない。
かき氷のシロップは匂いだけが違くて味は同じ、だとかいうもはや常識になりかけているウンチクを披露する少年の横を通り過ぎ、かき氷の屋台まで彼と歩いた。
何故か6色かけられカラフルになったかき氷を店員から受け取った私は、プラスチックのストロー兼スプーンで口内に放り込めばシャリ、と音を鳴らす。
いちご と ブルーハワイ と レモン と 桃 とコーラ と ブドウ のかかったかき氷はあまり美味しくはなかった。
けれど不味そうに食べる私を面白がるように日々樹渉は見つめてくるので、思わずむせ返った。とても暑い夏、なにが残夏だよばか。8月はまだまだ夏だよ、こんなに心も体も気持ちも全て夏色に染まって、熱くなる体温と熱を持つ私の恋。
「 ゲロまずい 」
「 ははっ、それは愉快ですね 」
「 愉快じゃねぇです 」
私たちの会話は、この日もちゃんとできていた。
ヘンテコな、だけど楽しい会話はできていた。
私は 、全く今後の不幸なんて気づかなかったのだ。
私は 、何を思ってこのような作品を書いているのだろう。彼との思い出は、書ききれないほど溢れているのに言葉が、出てこない。
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明蛍 - 更新待ってます 頑張ってね (2019年2月18日 17時) (
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作者名：白城あろ
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年5月26日 17時
