第三幕:普通の伝導者 ページ35
ニューリィジムは、トレーナーズスクールの真横……敷居よりも一段高い丘の上に位置している。
整備され、簡易的だが客席も用意されている。
その中央で、このジムの主人______ノーマルタイプのジムリーダー、ミカナは待ち構えていた。
「……、来たね、チャレンジャー!」
ドアが開くのを察知し、ミカナは振り返る。その先には、一皮剥けたとまでは行かなくとも、何かしらとっかかりを掴めたような、ようやく覚悟に向き合うスタートラインに立った少年がいた。
その顔を見て、ミカナは頷く。
確か、彼の相手をしたスクール生は、この子だったはず。自分の見込み通り、良い具合に緊張をほぐし、背中を押してくれたらしかった。
「ここはニューリィジム。……って、ああ、そんなこと言わなくても知ってるか〜!」
朗らかに言ってのける。が、挑戦者である少年……ニオの顔には強張りが残る。
けれどこれは、むしろ良い傾向だ。適切な緊張は、質の良いパフォーマンスを生む。
「自己紹介も、さっき済ませちゃったし、早速始めよう?」
ミカナが取り出したボールは2つ。
相対するニオの手持ちは1体……チコリータのみ。
(……回復は済ませてある。ジムリーダーさん、強そうだけど……ぼくだって……っ!!!)
決意を、胸に。
ニオは、チコリータの入ったボールを手にしっかりと握りしめる。
「_______よろしくお願いします!」
ー ー ー
ー ー ー
「ちょっと、早く!もう始まってるよ!」
「れ、レイナさん……元気ですね……ぼく、少し……休憩させて……ほし……」
ギャラリーのようになっている、二階の観戦席。
ニオより一足先にジム戦を終えたシルフォスは、二足先に終わっているレイナに、引っ張られるようにして、階段を上り切った。
いくら間を置いたとはいえ、全力のバトルを二連戦。ポケモンの体力は回復できても、人間のスタミナは据え置きだ。
……だと言うのに。
「チラーミィ、《スイープビンタ》だよ!」
ミカナのキレのある指示に従い、チンチラポケモンのチラーミィが、強く地面を踏み込む。
あまりの速さに、回避は間に合わないと判断したチコリータは、“受け”に徹する。
「__速い、ですね」
「うん、私とシルフォスくんを相手にした後なのに、ミカナさん、全然疲れてないみたい……」
シルフォスの言葉に、レイナも同意する。
ジムリーダーの底力……その一端が、垣間見えているかのようだった。

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作者名:じぇっと | 作者ホームページ:明日のストラナでお会いしましょう。
作成日時:2024年12月24日 23時