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「______い、行きます!《はっぱカッター》……!」
(……来た!)
ついにニオが動いた。
《ソウルギア》なる不思議な歯車を用いた、ポケモンにオーラを纏わせる技術。受け身でいれば負けるという、本能が告げる警告が、ニオを突き動かした。
「いけるよね、シズクモ。全部包んで!」
「_______っ!?」
突飛なその指示に、シズクモは瞬時に対応する。
《バブルこうせん》……いや、もっと初級の、《あわ》の応用。高速で舞い散る木の葉を、一つ一つ、丁寧に、その水球に包んでいく。まるで、トレーナーのイメージが、そのままポケモンに伝わっているかのように。
勢いよくシズクモヘ向かってきた木の葉が、水泡に囚われ、勢いを殺される。
「……はい、おしまい。」
ノインがパチン、と指を弾いた。
水球が弾け、はらはらと木の葉が、意思のないものと化し、バトルコートに落ちていった。
「……す、ごい……っ、」
思わず漏れ出る歓声。
ニオはただ、己のポケモンが放ったわざが、完封される様子に、ただ……ただ見惚れていた。
「こんなわざがあるなんて……」
「驚くのはまだ早いわよ、《バブルこうせん》!」
もはや《ハイドロポンプ》並の勢いで飛び出すジェット水流を、チコリータは慎重に避ける。間にも、ニオは考える______
「それなら……チコちゃん、《つるのムチ》だよ!」
指示を受け取ったチコリータは、体に生えている植物を器用に操り、シズクモの体を捉えようとする。飛び道具が意味をなさないなら、こちらから直接叩くまで。
縦横無尽に迫る蔦。いくら経験を積んだトレーナーでも、これを避け切るのは難しい。
……普通ならば。
「_____地面へ向けて、《バブルこうせん》!」
通常より勢いを増した水流が、シズクモの体を空へと押し上げる。進化後のオニシズクモでは叶わない、今だけの付け焼き刃。
迫る蔓は空振り。しかし、シズクモは自由に動ける足場を失った。
「追って!」
チコリータは、それを逃さず追撃する。
「《いとをはく》!蔦を起点にして!」
ならば、ノインはそれを利用する。
縦横無尽に張り巡らされた《つるのムチ》を、木の枝のように使い、ターザンロープの要領で、シズクモを飛び回らせる。
ソウルギアを用いた、思考の高レベルでの共有。
そして、土壇場の意地とひらめきが、ここまで戦いを長引かせている。
_______ここへ来て、バトルは機動戦へもつれ込んだのだった。

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作者名:じぇっと | 作者ホームページ:明日のストラナでお会いしましょう。
作成日時:2024年12月24日 23時