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(＿＿＿＿＿＿怖い。)
紛れもなく、今。自分の体をふるわせているのは、恐怖でしか無い。
初めての、誰かとのバトル。野生のポケモンを相手にしたことこそあれど、トレーナーのポケモンと戦うのは、ニオにとって初めてだった。
怖い。
体が……冷えていく。
……何が、怖いのかもわからない。
下手に攻勢に出て、自分のポケモンが傷つくのが怖い？
バトル相手のトレーナーが、気の強そうな人だから怖い？
わからない、わからない。
ただわかるのは、今、ニオを支配しているのは、底知れない恐怖であるということだけ。
一歩踏み外せば、真っ逆さまに落ちていってしまいそうな、足元すらあやふやな＿＿＿＿
(＿＿＿そう、パニック状態。誰もが一度は陥る、トレーナーとしての、“最初の壁”……)
目を回しつつあるニオの様子に、スクールトレーナーのノインは直感する。
バトルをする上で、一番初めにぶつかる問題といえば、何だろうか。
ポケモンと心を通わせること？
種族値や個体値のギャップ？
センスや才能の落差だろうか。
その答えは、どれも“否”である。
＿＿＿バトルと銘打った暴力に、耐え切れるかどうか。
倫理観の壁である。
この世界は、あまりにも暴力で溢れている。だって、それが当たり前だから。
その現実に直面して、目を背けることなく、受け入れられるか。マヒしきった正義感に呑まれることなく、自分を保っていられるのか。
(……そ、……っか。だから、ミカナさんは、私に……)
かつて、少女も迷っていた。
迷いに迷い、それでも、周りの手を借りながら、こうして前を向いているノイン。今のニオが、ノインには、過去の自分に重なって見えた。
だからこそ、かつて自分も通ったから、尚のことムカつくのだ！
(＿＿＿ああもう、見てらんない！)
手加減はしない。
それでいて、キチンと後輩に“道”を示す。
ぐるぐる渦巻いている目を、今に醒させてやる。
手に取るのは、銀色の歯車。
慕うジムリーダーより授けられた、強者の証。
強者として振る舞うには、まだただの一スクール生でしかないノインは、未熟かもしれない。
けれど……
「良い加減＿＿＿＿＿＿」
ギアを上げる。
想いに、絆が、呼応する。
周囲の人間のありとあらゆる目が、今。
ノインと、シズクモに集まる。
白いオーラが、絆を祝福するように、シズクモを包み込んだ。
「＿＿＿＿＿＿＿シャキッとしなさいよ、チャレンジャー！！！」
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作者名：じぇっと | 作者ホームページ：明日のストラナでお会いしましょう。
作成日時：2024年12月24日 23時
